第19回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録
日時
令和4年11月14日(月)15:00~16:57
場所
TKP新橋カンファレンスセンター 15階ホール15D
出席者
岩城委員、大江委員、小林(司)委員、小林(由)委員、小林(洋)委員、島村委員(オンライン)、谷内委員、 冨樫委員、原田委員、藤澤委員、森戸委員、山口委員(オンライン)、渡邊委員(オンライン)
(オブザーバー)
鮫島企業年金連合会理事長、松下国民年金基金連合会理事長
議題
(1)私的年金制度(企業年金・個人年金)の現状等について
(2)私的年金制度(企業年金・個人年金)の今後の課題について
議事
議事内容
○大竹企業年金・個人年金課長
それでは、定刻となりましたので、ただいまより第19回社会保障審議会企業年金・個人年金部会を開催いたします。
委員の皆様方には、御多忙のところ、御参集いただきまして、どうもありがとうございます。
初めに、事務局に異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。
年金局長の橋本でございます。
大臣官房審議官の朝川でございます。
年金局総務課長の岡部でございます。
私、企業年金・個人年金課長の大竹でございます。
基金数理室長の植田でございます。
それでは、前回の部会から約2年ぶりの開催ということもございますので、また、新たに委員の任命等もございましたので、冒頭、局長から御挨拶を申し上げます。
○橋本年金局長
改めまして年金局長の橋本でございます。
企業年金・個人年金部会の開会に当たりまして、一言、御挨拶を申し上げたいと思います。
委員の皆様方におかれましては、それぞれ大変お忙しい中、当部会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。改めて御礼申し上げたいと思います。
さて、我が国の年金制度は、誕生以来、長い歴史を経まして、1階が全国民共通の基礎年金、2階が被用者を対象とした報酬比例年金、そして、これらの公的年金に上乗せする形で、老後生活の多様な希望やニーズに対応する3階部分として、企業年金や個人年金といった私的年金が組み合わさる形に整理されてまいりました。
これらのうち、企業年金については、高度成長期に適格退職年金と厚生年金基金が中心となって普及してきたわけでございますが、御承知のとおり、バブル崩壊後の経済環境の大きな変化等を踏まえまして、適格退職年金は2011年度末で廃止となり、厚生年金基金も2013年度で新設が終了いたしました。
一方で、2001年に確定拠出年金制度が、2002年には確定給付企業年金制度がそれぞれ創設され、これらDBと企業型DCが今日における企業年金の基本的な形態になっております。
また、個人年金については、1989年の法改正によりまして、自営業者等が基礎年金に上乗せして受給できる国民年金基金が設立されました。
さらに2001年の確定拠出年金制度の創設に際しては、企業型DCのみならず、個人型DCもつくられまして、個人型DCは、iDeCoという愛称で親しまれて、普及が進んでおります。
これらの私的年金についても、逐次見直しが行われてきておりまして、直近の令和2年の法改正におきましては、確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げますとともに、受給開始時期等の選択肢を拡大する、それから、確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和など、制度面、手続面の改善を図る、こういった見直しを行いまして、施行を進めてきております。
併せて、令和3年度税制改正におきまして、DCの拠出限度額の算出方法の見直しを行いまして、令和6年12月から施行することといたしております。
以上、申し上げましたようなこれまでの過程において、様々な今後の宿題もいただいておるわけでございまして、次の制度改正をにらんで、改めて議論を積み重ねていく必要があると感じております。
これらに加えまして、今年に入ってからは、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が本年6月に定められまして、この中では、高齢者に向けたiDeCo制度の改革等を図ること、そして、これらを含めて、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定することなどが盛り込まれております。
このように私的年金をめぐっても大変多くの課題があり、一つ一つ丁寧に議論していく必要があるわけでございますが、まず当面は、「資産所得倍増プラン」に関連した議論からお願いしたいと考えております。
当部会の委員をお引き受けいただいた皆様方におかれましては、それぞれがお持ちの豊富な知識、経験を存分に発揮していただきまして、忌憚のない御意見を賜りますよう、何とぞよろしくお願いいたします。
年金をめぐりましては、ともすれば分かりにくいとか、あるいは実感が湧きにくい、そういった声をよく耳にいたしますが、一人一人の暮らしを左右する大切な仕組みを今後とも安定的に運営していくためには、世代を超えて制度に対する理解と信頼を得ていくことが重要でございまして、これは公的年金も私的年金も同じだと思っております。
専門的、技術的にどうしても分かりにくい要素があることは確かでございますが、私ども事務局としても、できるだけ分かりやすい説明を心がけてまいりたいと思っております。
以上をもちまして、開会に当たっての私からの挨拶とさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
○大竹企業年金・個人年金課長
それでは、審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
本日の資料といたしまして、タブレットに入れておりますけれども、資料1「私的年金制度(企業年金・個人年金)の現状等」。
資料2「私的年金制度(企業年金・個人年金)の今後の課題」。
以下、参考資料1から参考資料4まで御準備しております。
次に、委員の交代がございましたので、御報告をいたします。
神野直彦委員、井戸美枝委員、伊藤彰久委員、臼杵政治委員、内田文子委員、小川伊知郎委員、白波瀬佐和子委員、細田眞委員が退任されました。
後任といたしまして、新たに御就任いただいた委員の方々について御紹介をいたします。
50音順で御紹介させていただきますけれども、岩城みずほ委員でございます。NPO法人みんなのお金のアドバイザー協会副理事長でござい ます。
小林司委員でございます。日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長でいらっしゃいます。
小林洋一委員でございます。東京商工会議所社会保障委員会委員でございます。
続いて、本日オンラインで、また後ほど御参加いただけることになっておりますけれども、島村暁代委員、立教大学法学部教授でございます。
谷内陽一委員、株式会社第一生命経済研究所主席研究員でいらっしゃいます。
冨樫幸子委員でございます。全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会賃金政策部専門部長でいらっしゃいます。
原田俊丈委員でございます。公益社団法人日本年金数理人会理事長でいらっしゃいます。
オンラインで御参加いただいておりますけれども、山口由紀子委員でございます。相模女子大学人間社会学部教授でいらっしゃいます。
また、オブザーバーといたしまして、企業年金連合会の鮫島理事長、国民年金基金連合会の松下理事長に御参加いただいております。
今回、島村委員、山口委員、渡邊委員につきましては、オンラインにて御参加をいただいております。
本日の委員の出欠状況でございますが、金子委員から御欠席、島村委員から遅れて御出席との御連絡をいただいております。
御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
次に部会長の選任について、御報告申し上げます。
神野前部会長が退任されましたので、部会長の選任をしていただく必要がございます。
部会長の選任につきましては、社会保障審議会令によりまして、部会長は当該部会に属する社会保障審議会の委員の互選により選任することとされております。
社会保障審議会の委員で当部会に所属されているのは、森戸委員と山口委員のお二人でございますので、事前にお二方に互選をいただきましたところ、森戸委員に部会長をお願いすることとなりましたので、御報告させていただきます。
それでは、これからの議事運営につきましては、森戸部会長にお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○森戸部会長
部会長にお選びいただきました森戸でございます。
委員の皆様の御協力をいただきながら、円滑な議事運営に努めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速ですが、部会長代理の指名をさせていただきます。
社会保障審議会令の第6条第5項に、部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員または臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理すると規定されています。
そこで、部会長代理につきましては、渡邊委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○森戸部会長
それでは、異議がないようですので、渡邊部会長代理、よろしくお願いいたします。
渡邊部会長代理から、一言、よろしくお願いいたします。
○渡邊部会長代理
筑波大学の渡邊でございます。
一生懸命頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○森戸部会長
ありがとうございます。
それでは、カメラの方々はこれで退室いただけますでしょうか。
(報道関係者退室)
○森戸部会長
それでは、早速、議事に入らせていただきます。
本日は「(1)私的年金制度(企業年金・個人年金)の現状等について」、「(2)私的年金制度(企業年金・個人年金)の今後の課題について」を議題といたしたいと思います。
まず事務局から説明をお願いいたします。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
資料1と資料2を通じて御説明をさせていただければと思います。
資料1につきましては、現状の制度の概要、そういった内容でございますので、少しはしょった形で御説明させていただければと思います。
まず資料1でございますけれども、3ページ目をお開きいただければと思います。年金制度の設計の考え方になりますが、我が国の年金は3階建ての構造ということで、公的年金、私的年金を合わせて老後生活の多様な希望、ニーズに対応していくという構造でございます。
4ページ目でございますけれども、いわゆる3階建てと申し上げても、企業年金・個人年金制度のほか、幅広く見れば、退職金、あるいは中退共みたいな仕組みを含めて、幅広い仕組みにおいて、老後の生活を成り立たせているということかと思います。
5ページ目でございます。退職給付制度の類型ということでございまして、いわゆる内部留保型の退職一時金、自社年金のみならず、外部で積立てをしている適格退職年金、その他、様々な制度がございましたけれども、このようなものがいわゆる企業年金と呼ばれているということでございます。様々な要件を満たすものについて税制上の優遇措置が認められているということでございます。
6ページ目でございますけれども、企業年金制度の変遷でございますが、いわゆる退職金制度が戦後に整備され、充実されてきたことを基に、その後、資金負担の平準化の観点から、年金制度を導入する企業が増えてきたということでございます。
それに対して、税制上の措置を設けたということであったり、あるいは企業年金に厚生年金保険の一部を代行させる仕組みの厚生年金基金が創設されてきたということでございます。
7ページ目は、その変遷の続きでございますけれども、その後、経済の状況であったり、あるいは新会計基準の導入、あるいは世の中の雇用の流動化への対応の必要性、そういったものを背景として、DC、DBが創設されてきたということでございます。
こちらについて、8ページ目でございますけれども、大きな仕組みについて、様々な枠組みがあるということでございますが、企業が従業員のために実施する仕組み、あるいは個人が自ら加入するところで大きく2種類に分けられるということでございます。それぞれについて確定給付、確定拠出に分けられますので、DB、DC、国民年金基金、個人型DC、そういった種類があるということでございます。
9ページ目は、DBとDCの基本的な仕組みということでございます。
10ページ目でございますけれども、基本的なDB、DCの仕組みの比較でございますが、DBにつきましては、適格退職年金、あるいは厚生年金基金の移行の受け皿としての位置づけの色合いが強いということがございますけれども、一方で、DCにつきましては、資産が老後所得となることを担保するための措置として、中途引き出しの原則禁止等の特徴を有するということでございます。
それぞれの経緯を反映して、拠出、給付の仕組みは異なっておりますけれども、公的年金の給付と相まって、国民の老後の所得確保を図るという意味では共通しているということでございます。
11ページ目でございますけれども、それぞれの制度概要ということでございます。確定給付企業年金の制度概要ということで、労使の自主性を尊重しながら、受給権の保護を意図した制度でございます。また、将来の給付を事業主が約束するものが確定給付企業年金ということでございます。
12ページ目でございますけれども、確定給付企業年金につきましては、規約型と基金型があるということでございます。
13ページ目でございますけれども、企業型の確定拠出年金の制度概要になりまして、企業型の確定拠出年金につきましては、企業が掛金を原則拠出して、資産の運用を加入者自らが行うという仕組みでございます。
14ページ目は、個人型確定拠出年金ということで、いわゆるiDeCoと呼ばれているものでございますけれども、加入可能要件といたしまして、国民年金の被保険者という形になっております。
掛金につきましては、一番下になりますけれども、例えば第1号被保険者あるいは任意加入被保険者であれば月額6.8万円、企業年金に加入している第2号被保険者であれば月額2万円、企業年金に加入していない第2号被保険者及び第3号被保険者については月額2.3万円となっているということでございます。
15ページ目でございますけれども、中小事業主掛金納付制度ということで、いわゆるiDeCoプラスと呼ばれている仕組みでございます。企業年金を実施していない従業員300人以下の事業主がiDeCoに加入する従業員の事業主が、掛金を追加的に拠出するものということでございます。
こちらは右側に実施状況を載せておりますけれども、対象者数等が伸びてきているということでございます。
16ページ目でございますけれども、自営業者など国民年金の第1号被保険者が任意に加入する確定給付型の個人年金として、国民年金基金制度があるということでございます。地域型、職能型がございますけれども、以下、説明書きにあるような形で運営がなされているということでございます。
17ページ目、国民年金基金の給付の設計です。1口目、2口目以降という形で様々なサービスがあるということでございます。
18ページ目でございますけれども、国民年金基金の加入員数ということで、2021年度末時点で約34万人という形になっているところでございます。
19ページ目でございますけれども、厚生年金基金の仕組みでございます。公的年金である厚生年金の一部を国に代わって厚生年金基金が代行給付を行う仕組みでございます。また、基金ごとに独自の上乗せ給付を支給している形になっております。
20ページ目でございますけれども、厚生年金基金につきまして、短期間で脱退をした方に対する年金給付等を一元的に行うことを主たる目的として設立された法人として、企業年金連合会ということでございまして、年金通算措置が拡充されたことに伴いまして、確定給付企業年金や確定拠出年金も含めた企業年金全体の年金通算センターとしての事業が追加されて、組織も改編されたということでございます。
厚生年金基金の関係は、21ページ目で御説明させていただきますけれども、平成26年4月1日に施行されました健全化法によりまして、この厚生年金基金の新設を認めないこととしております。
また、5年間の時限措置として、特例解散制度の見直しなどを実施しているところでございます。こちらにつきましては、同法の施行から10年を経過する日までに存続厚生年金基金の解散等について検討することが規定されております。
この基金につきましては、その下の数字になりますけれども、徐々に減少が見られまして、現在では5基金となっているということでございます。
税制の関係でございますけれども、23ページ目をお開きいただければと思います。企業年金等における税制についてということでございまして、確定拠出年金、確定給付企業年金、国民年金基金のそれぞれにつきまして、拠出時、運用時、給付時、それぞれがどのような税制となっているかということでございます。
基本的な枠組みとして、拠出時においては非課税となっておりまして、また、運用時につきましては、特別法人税が課税されているということでございますけれども、特例措置によって、令和4年度まで凍結されています。
その上で、給付時においては、一定の課税がなされるということでございますけれども、年金であれば公的年金等控除、一時金であれば退職所得控除などの措置があります。
24ページにつきましては、今、申し上げたことを絵にしたものでございます。
25ページ目でございますけれども、今、御説明申し上げた運用時の課税に関します特別法人税に関しましては、25ページ目に書いてございますような昭和37年度以降の沿革があるということでございますけれども、平成11年度に2年間の課税の凍結が行われておりまして、以後、その延長という形で課税凍結が続いているところでございます。
こちらにつきましては、令和2年度に課税凍結が3年間延長されておりますけれども、今年末に一定の結論を得る必要があるということでございます。
制度の現状でございますけれども、27ページ目でございます。企業年金の加入者数の推移ということでございますが、適格退職年金、厚生年金基金から、制度の中心が確定給付企業年金であったり、企業型確定拠出年金に移行しております。
28ページ目でございますけれども、iDeCoの加入者数につきましては、2017年1月から加入可能範囲が拡大されておりますが、特にそこを節目といたしまして、加入者数が増加しているということでございます。
29ページ目でございますけれども、確定給付企業年金の規約数の推移という形になります。近年では確定拠出年金、DCへの移行が進んでいることによって、減少傾向にあるということでございます。
30ページ目でございますけれども、一方、企業型DCにつきましては、毎年増加が見られているということでございます。
31ページ目でございますけれども、企業年金の実施状況でございます。企業年金がある企業は減少しており、特に退職一時金のみの給付が増えているところでございます。また、退職給付の水準につきましては、全般的に低下が見られる形になっております。
従業員規模別で見ますと、32ページ目でございますけれども、従業員の規模が小さいほど、退職年金制度の実施割合が低い形になっております。全ての従業員規模で退職年金制度の実施割合は低下しておりますけれども、特に従業員規模300人未満で減少幅が大きい形になっております。
32ページ目の資料につきましては、退職年金制度、すなわち、確定給付企業年金、厚生年金基金、適格退職年金、企業型確定拠出年金、企業独自の年金で比較をしておりますけれども、このうちDC、DBについて比較をしたものが33ページでございます。
DB、企業型DCの実施状況は33ページ目でございますけれども、従業員規模が小さくなるほど、企業年金の実施割合が低くなる傾向にあります。こちらは前ページと同じ内容でございますが、絶対値だけ見ると低いということがございますけれども、トレンドだけ見ますと、300人未満の企業でDC、DBの増加傾向にあるところでございます。
34ページ目でございますけれども、DB、DCの資産残高の推移ということでございます。こちらはDBの資産残高が多いところでございます。
近年の制度改正ということでございます。36ページ目をお開きいただければと思います。令和2年に法律改正がございまして、年金制度の改正がございました。また、令和3年に税制改正がございました。
こちらにつきまして、令和2年6月5日から順次施行が進んでいるということでございます。先月、令和4年10月にも行われておりますし、また、2年後の令和6年12月にも実施が行われる予定という形になっております。
令和2年6月5日は、DBの支給開始時期の設定可能範囲が65歳から70歳まで延びたことがございますし、令和2年10月には、中小企業向けの制度、iDeCoプラス、そういったものの対象範囲の拡大が行われておりますし、また、同一労働同一賃金のガイドラインや選択制DCなどに関する解釈の明確化なども行っているということでございます。
以降、令和3年1月1日は、iDeCo加入申込みのオンライン化であったり、令和4年の4月1日は、DCの受給開始時期の上限引上げ、5月からは加入可能要件の拡大などが行われているところでございます。
こちらにつきまして、詳細資料を以降につけておりますけれども、37ページ目は、令和2年に行われた年金制度改正の概要でございます。こちらは公的年金も併せて制度改正が行われておりますけれども、私的年金につきましては、赤枠で囲ってある部分ということでございます。
それぞれの内容につきまして、38ページ目以降に資料をお付けしておりますけれども、38ページ目でございます。確定拠出年金の加入可能要件の見直し等ということで、例えば1の(1)でございますけれども、企業型DCにつきましては、厚生年金被保険者であれば加入可能とするという形にされておりますし、(2)iDeCoにつきましては、国民年金被保険者であれば、加入可能とするという見直しが行われています。
2といたしまして、受給開始時期の選択肢につきましても、DCなどにつきまして、上限年齢を75歳に引き上げることがなされているところでございます。
以上につきまして、ビジュアルにしたものが39ページ目でございます。DB、DCはそれぞれの見直しが行われているということでございます。
40ページ目でございますけれども、中小企業向け制度、iDeCoプラスなどでございますが、対象範囲を100人以下から300人以下に拡大することが行われておりまして、令和2年10月1日から施行されております。
41ページ目でございますけれども、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和ということでございまして、従前ですと、事業主掛金の上限を月額5.5万円から3.5万円に引き下げた上で、かつ規約の定めがあるところにつきまして、従業員の方がiDeCo活用可能ということになっておりましたけれども、この上限管理をよりきめ細やかに行うことによって、それぞれの加入者の単位でiDeCoの上限、加入可能範囲が広がったところでございます。
41ページ目の下の絵で描いてございますけれども、改正前は事業主掛金が低い従業員にとっても、拠出可能な枠があったとしても、iDeCoに加入できないということがございましたけれども、改正後は企業型DCの事業主掛金が低い従業員については、iDeCoを利用しやすくなったところでございます。
42ページ目でございますけれども、企業型DC加入者のマッチング拠出とiDeCo加入の選択ということで、こちらも見直し前は事業主の方がマッチング拠出を導入している場合には、iDeCoという選択肢はありませんでしたけれども、10月からは選択ができるようになったところでございます。
43ページ目でございます。企業型DC拠出限度額の見直しということで、特に2年後の12月に向けた見直しでございますけれども、DB等の他制度に加入している場合については、43ページの下の図になりますが、5.5万円の枠につきまして、企業型DCで2分の1、月額2.75万円、DBで2分の1というような枠になっていたところでございます。
こちらにつきまして、44ページ目にありますとおり、DBの掛金額の状況を見ますと、月額2.75万円より低いDBが多かったということでございまして、このような状況を踏まえて、よりきめ細やかな上限設定を可能にしていくこととしております。
そういったわけで、45ページ目でございますけれども、iDeCoについて、DB等の他制度ごとの掛金相当額の実態を反映するということで、5.5万円から、DBの掛金相当額とDCの事業主掛金額との合計額を引いた額を2万円の上限内でiDeCoの上限額としているところでございます。
こういった見直しを踏まえまして、46ページ目でございますけれども、令和6年12月からの形になりますが、DB等の他制度の掛金相当額も反映した形に見直しが行われる見込みということでございます。
最後、47ページ目でございますけれども、きめ細やかな上限設定を可能とする仕組みといたしまして、企業年金プラットフォームが設定されているということでございます。iDeCoの上限管理をしっかりと行うために、企業年金の加入状況であったり、その拠出額を正確に把握する必要があるところでございますけれども、こちらのプラットフォームを通じまして、事業主の方、あるいは企業型RK、その他の方々に情報を登録していただくことによって、その上限の管理を行うことを可能としているということでございます。
この仕組みを構築することで、加入時であったり、転職時に必要とされておりました事業主証明書であったり、年1回の現況確認を廃止することができるところでございます。
以上が資料1でございます。
続きまして、資料2でございますけれども、私的年金制度の今後の課題ということで、最近の動きを御説明させていただければと思います。
3ページ目でございますけれども、令和2年の改正法附則における検討規定及び附帯決議ということでございます。令和2年の改正法附則の検討規定を御紹介しておりますけれども、上の枠に書いてございますとおり、個人型確定拠出年金及び国民年金基金の加入の要件、個人型確定拠出年金に係る拠出限度額及び中小事業主掛金を拠出できる中小事業主の範囲等について、必要な措置を講ずるものとすることが記載されているところでございます。また、衆参両院での附帯決議がなされている形になっております。
4ページ目でございますけれども、税制の関係でございますが、令和4年度税制改正大綱を御紹介させていただければと思います。4ページ目の真ん中ほど、また、一番下になりますけれども、拠出限度額につきましては、順次見直しがなされてきておりますが、拠出、運用、給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しが必要なのではないかと言われておりまして、総合的に検討することが記載されているところでございます。
5ページ目でございますけれども、令和4年、今年の6月7日になりますが、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」ということで閣議決定がなされております。この中でiDeCo制度の改革が記載されておりますし、また、「就業機会確保の努力義務が70歳まで延びていることに留意し」ということが書かれているところでございます。
これにつきまして、新しい資本主義実現会議に検討の場を設け、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定されているところでございます。
こちらの閣議決定を踏まえまして、6ページ目でございますけれども、今、申し上げた新しい資本主義実現会議に設けるとされておりました検討の場といたしまして、資産所得倍増分科会が設置されておりまして、先月10月から開催されているところでございます。
こちら資産所得倍増分科会の概要を6ページ目の上に書いておりますけれども、新しい資本主義実現会議に設けられた検討の場ということで、こちらに記載の委員の方々で議論が先月から行われているところでございますし、先月17日の第1回には、厚生労働省から加藤厚生労働大臣にも出席いただきまして、厚生労働省としてもしっかりiDeCo改革に取り組んでいくような話をさせていただいているということでございます。
7ページ目でございますけれども、経済対策の関係で、先月、閣議決定もなされておりますけれども、その中でもiDeCo制度改革についても触れられているところでございます。下線の部分でございますけれども、iDeCo制度の改革について検討し、本年末の来年度税制改正において結論を得るとされているところでございます。そのような中で、税制の場も含めて議論が行われるということでございます。
時間的にも非常に限られているところでございますけれども、現状について確認をさせていただいた資料が資料2の8ページ目でございます。iDeCoの加入可能年齢についてという資料がございますけれども、iDeCoの加入可能年齢については、現在、国民年金被保険者であることを加入要件としているところでございます。
そういったわけで、国民年金の第1号、あるいは第3号の被保険者の方は60歳までということになっておりますし、国民年金の任意加入被保険者の方は65歳まで、国民年金の第2号被保険者の方が原則65歳までになっているところでございます。閣議決定におきましては、「就業機会確保の努力義務が70歳まで延びていることに留意し」ということが書いておりますけれども、加入可能年齢についてどのように考えるかというところが御議論いただきたい点でございます。
9ページ目以降は参考になりますけれども、9ページ目は、この夏に厚生労働省が行っております税制改正要望におきまして、iDeCo改革に伴う税制上の所要の措置ということで、資産所得倍増分科会において議論される資産所得倍増プランに基づいて、税制上の措置を講ずることを求めているということでございます。
10ページ目でございますけれども、こちらは資料1でも御紹介をさせていただきました特別法人税の課税につきまして、撤廃あるいは課税停止措置の延長を求めているところでございます。
もう一つ大きな動きといたしまして、金融審議会での顧客本位タスクフォースで議論されている内容について、御紹介をさせていただければと思います。
12ページ目でございますけれども、経済成長の成果の家計への還元促進について検討を行うということで、市場制度ワーキング・グループの下に顧客本位タスクフォースが設置されております。具体的には顧客本位の業務運営全般であったり、アセットオーナーの受託者責任、金融経済教育、こういったものが議論されておりますけれども、この中で企業年金に関することにつきましても、議論が行われているところでございますので、御紹介をさせていただければと思います。
13ページ目でございますけれども、家計の資産形成を支える各参加者の機能底上げということで、家計の資産形成を支えるために、関係者の方それぞれが期待される機能を十二分に発揮していくことが期待されているところでございます
13ページ目の上の真ん中にアセットオーナーの機能発揮として、企業年金等ということで例示がなされているところでございます。
もう少し具体的に申し上げますと、14ページ目でございますけれども、受託者責任のところで赤枠が囲ってございます。企業年金基金の運用がどうあるべきなのか等も議論すべき、また、企業年金を含めての横串、ルールの横断化を目指してはどうかということが意見として出ているところでございます。
15ページ目でございますけれども、第2回での議論ということで、二つ目の枠になりますが、年金等も含めてインベストメント・チェーンの各主体が顧客や受益者の最善の利益を図るよう横断的な責任規定を整備すべき、また、横断的な責任規定の整備に際しては、忠実義務・善管注意義務、誠実公正義務といった既存の一般概念の整理についても検討して欲しいということが書かれているところでございます。
特に我々としてある意味求められていることといたしましては、加入者の方に対する忠実義務につきまして、事業主の方については、既に規定がなされているところでございます。一方で、DB基金の理事の方につきましては、基金に対する忠実義務は規定されておりますけれども、加入者に対する義務は明確な形では規定がされていないところでございます。我々としては、基金に対する義務、すなわち、それは加入者に対する義務でもあるだろうと理解をしておりますし、現にそういう動きなのだろうと考えておりますけれども、ここに書かれておりますとおり、横断的にある意味少し統一的な規定をしたほうがいいのではないかという議論がなされていると理解しております。そういった意味で、基本的には何か新しい義務が課されるよりは、現状の確認なのだろうと理解をしております。
16ページ目、その他でどのような資料が出ているかということでございますけれども、例えばDBに関する課題として、運用管理の意思決定では、どのような視点で運用委託先が決定されているかであったり、外部専門家をどの程度活用しているかについて、資料が提出されているところでございます。左側の資料などは、母数が少ないのではないかというところもございますけれども、こういったものが資料として出されているところでございます。
17ページ目でございますけれども、DCについても資料が出されておりまして、運営管理機関及び商品に対する評価・モニタリングの状況ということで、こちらについては、こちらの部会でも議論を行いまして、5年に1回の運営管理機関に対する評価について努力義務化されているところでございますけれども、現状どのような状況にあるかという直近の数字の資料が出されているところでございます。
18ページ目でございますけれども、金融経済教育ということで、資産所得倍増プランでもある意味一つの柱だと思っておりますけれども、企業型DCにおける継続投資教育の資料が提出されているところでございます。
継続投資教育につきましては、努力義務として設定されているところでございますけれども、こちらの資料では、事業主側と加入者側との認識のギャップがあることが紹介されているところでございます。
19ページ目でございますけれども、DCにおける継続投資教育の続きでございますが、直接関係しないところもございますけれども、元本確保型商品で運用されているとか、指定運用方法の選定状況などが紹介されているということでございます。
21ページ目以降は、働き方やライフコースの多様化、高齢者雇用の状況で、年齢引上げであったり、そういう働き方の多様化みたいなものについて、現状はどうなっているかということについて資料をつけておりますので、後ほど御参照いただければと考えております。
長くなりまして恐縮ですけれども、資料については以上でございます。
○森戸部会長
ありがとうございました。
それでは、ただいま御説明のありました資料について、委員の皆様から御質問、御意見等があれば、いただきたいと思います。
非常に幅広くいろいろな資料がありました。具体的にはiDeCoの加入可能年齢の話で、今、御意見をという話が課長からもありましたが、その点に限りませんので、広く資料全般について、御意見なり、御質問をいただければと思います。
それでは、どなたからでもよろしくお願いします。大江委員、どうぞ。
○大江委員
ありがとうございます。大江でございます。
資産所得倍増分科会については、年内という話もありますので、その関係で非常に急いでいる話としては、課長のお話にあったiDeCoの加入者範囲の話があると思っております。加入者範囲のことについて加入可能年齢を65歳以上も認めるという案が出ているわけですけれども、この背景は、給与所得者の方が70歳まで働くケースが増えていくことが考えられることから出ている議論かと思います。一方で、現状フリーランスであるとか、自営業であるとか、または非正規社員として働く場合は、60歳以降、iDeCoに加入できないという状況がありまして、ある意味そこの不公平をさらに広げてしまうことになろうかと思います。
本来、そして前回の法改正の趣旨もそうでしたが、働き方によらず、長く多様な働き方に沿っていくような制度という観点から言いますと、働き方によらず65歳まで加入できることが望ましい姿なのではないかと思います。65歳以上のiDeCo加入を2号の方に認めるという話だとしても、国民年金の65歳まで加入という公的年金の議論と平仄を合わせて議論していくということも、年末の取りまとめの中で入れておいたほうがいいのではないかと個人的には思っております。
あと、働き方によらず老後資産形成ということでいきますと、限度額について、賃下げにもつながってしまうような企業型DCの選択制のようなものを封じる意味で、検討いただきたいと思うことが2点あります。
ひとつは、iDeCoの限度額について、企業年金がない方がもう少し備えられるように限度額を広げていくことです。
もう一つ、これは前から私は申し上げているのですが、企業型の確定拠出年金のマッチング拠出について、事業主掛金額以下という制約があるのですけれども、撤廃を早い時期にしていただきたいと思います。特にマッチング拠出の部分については、この制約が現場で複雑な選択を社員の方にさせてしまっていること、また、告知する事業主の方にもその対応を強いるというような事態になっております。10月からスタートした企業型DCとiDeCoの並行加入の促進の面からも、この点については撤廃を御検討いただきたいと思っております。
来年の2023年というのは、2016年の法改正で2018年施行からスタートしているものが多く、ちょうど5年という節目の年になりますので、来年以降のところでこのときに取り入れられた運用の改善のために導入をされた指定運用方法の話とか、商品本数の上限の話とか、運営管理機関の評価などがありましたけれども、どのぐらい効果があったのかということについて、データに基づいて検証ができればと思っております。
先ほど金融審議会のお話があって、御説明にはなかったのですが、アドバイザーの話がちょっと出ておりました。企業型DCとか、iDeCoの個別相談とか、加入促進の現場でファイナンシャルプランナーの方とか、IFAの方々とか、運営管理機関以外にいろいろ活躍されている方も増えてきているので、コミットするような実態があるのではないかと思います。金融商品販売の金商法の範囲といわゆるDCでの範囲は、法的な位置づけに違う部分があると思うのですけれども、この辺りをうまく整理できるように、ぜひ厚生労働省の方にもこの審議にコミットいただけるとありがたいと思っております。
以上です。
○森戸部会長
ありがとうございます。
iDeCoの加入可能年齢の引上げの点はもちろんですけれども、それ以外にも限度額の話、前々から部会でも議論していますが、例の労働者側の拠出が2分の1を超えられない話、2018年から5年たつので、いろいろ見直しなり、検証が必要ではないかという話、アドバイザーの話、非常に盛りだくさんで御意見をいただきました。非常に貴重な御指摘だったと思います。
大江委員におかれましては、あちらの会にも出ていらっしゃるので、ぜひあちらでも同じようにこちらの話をしていただければと思います。
事務局から今のことについて何かございますか。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
それぞれについて引き続き、年明けになると思いますけれども、長い目で御議論いただくことだと思っております。特に2018年改正のフォローアップにつきましては、どちらかというと、令和2年の改正のときには、それはさておきというか、ちゃんとデータを見てということになっていたと思いますので、数字なりの資料をちゃんとそろえて、御議論いただければと思っております。
○森戸部会長
ありがとうございます。
それでは、ほかの方、御意見がありましたら、お願いいたします。どうぞ。
○岩城委員
ありがとうございます。
NPOみんなのお金のアドバイザー協会の副理事長をしております岩城と申します。
私は2009年から金融商品を販売せずに、コンサルティングフィーだけを頂いて、家計の相談に応じてまいりました。相談者は、資産形成世代、そして、間もなくリタイアメントを迎える世代と様々なのですが、多くの方が抱いている不安は、長生きリスクに対応できるかということです。
長生きリスクというのは様々な要素を含みますけれども、その中でお金については、人生最後のときまでお金の心配をしないで生きていけるかということになります。今日は、今後の課題として、相談業務から感じることを3点挙げさせていただきます。
1点目は、金融経済教育についてなのですが、金融庁の顧客本位タスクフォースでも発言いたしましたけれども、資産運用でためた自己資金だけで長生きリスクに対応できるかと言えば、難しいケースが多いです。多くの相談者は、100歳まで資産を持たせることを希望されますけれども、実際にシミュレーションしてみますと、現役時代に一生懸命資産形成に取り組み、ある程度資産を積み増してきた世帯でも、リタイアメント後も運用しながら取り崩していかなければ、80歳半ばで底をつくケースが多いです。また、インフレでの通貨価値の下落という心配もあります。
合理的な資産運用の必要性はもちろんなのですが、一人一人が公的年金、私的年金を合わせた資産全体で考えていかなければ、安心な老後を過ごすのは難しいと思います。そこで、三つあります。
一つ目は、資産形成運用は制度ごと、口座ごとではなく、企業型DB、DC、iDeCo、NISAにおいて保有する資産全体を総合的に管理し、投資方針を策定することが大切です。そうすることで、高齢になっても管理がしやすくて、リタイアメントプランが立てやすいというメリットも生まれます。
二つ目は、希望する働き方や収入によって、公的年金と私的年金の受け取り方の組合せ、取り崩しの順番を考えることがすごく必要です。
三つ目は、合理的な運用を長く続けて、リタイアメント後も運用しながら取り崩していくことの必要性です。
そうなりますと、誰もが基本的な投資教育を受けて、身につけて、自身で実行していくことが重要になります。近年言われていますWPP(継続就労(Work Longer)・私的年金(Private Pension)・公的年金(Public Pension)の頭文字をとったもの)というのがとても重要で、中継ぎのPをプライベートペーションと捉えるならば、「WPP+NISA」となるかと思います。
以上のことから、大江さんも先ほどおっしゃっていましたけれども、厚労省と金融庁が連帯して、公的年金制度や理念、私的年金の制度、活用法を含めた金融経済・投資教育を推進し、その担い手として、個人のライフプランにそったマネープランの相談にも乗ることができる顧客本位のアドバイザーの育成をしていくことが必要だと思います。
2点目は、iDeCoの加入可能年齢と併せて、国民年金第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額についてです。企業年金がある第2号は、拠出限度額が現行月額2万円または1万2000円で「マッチング拠出の実態の大半をカバーする水準を勘案して設定」とあります。企業年金がない第2号の拠出限度額の現行2万3000円は、「企業年金を実施している企業の事業主掛金と加入者掛金の実態の大半をカバーする水準を勘案して設定」となっています。
根拠としても、制度としても、非常に分かりにくいように思いますし、自助努力として必要な老後の準備をすることを考えますと、働き方や事業主拠出、マッチングなどによって、拠出額を変えないで、いずれも5万5000円にそろえて、シンプルにしたほうがよいのではないかと思います。これまで行われてきた議論ということですので、引き続き検討を続けていただければと思います。
3点目は、公的年金の支給繰下げが75歳まで可能になり、私的年金とどう組み合わせるかで老後設計の選択肢を増やすことができます。しかし、実情として、DBは個別の規約上、受給時期の繰下げや、支給期間の選択肢がまだまだ少ないと思います。企業が従業員のニーズに合わせて受け取り方の柔軟性を高めていくよう、適切に制度設計していくことが期待されますので、そういったことももう一度ご議論頂ければと思います。
以上です。ありがとうございます。
○森戸部会長
ありがとうございました。
岩城委員におかれましては、こちらの顧客本位タスクフォースの委員でもいらっしゃるので、そちらでこちらの話もぜひしていただければと思いますが、今も幅広く御意見をいただきました。限度額の話もされましたし、大江委員と同様にこういう状況になってくると、アドバイザー的な仕事なりについて、もうちょっと考える必要があるのではないかという話もありましたし、現場で一番感じることは、長生きリスクが一番の懸念ということもなるほどと思って伺っておりました。
おっしゃったように、DC、DB、NISAなど、いろいろなツールというのですか、枠がある中で複雑化してきており、役所の担当する部署も違いますので、そういうものを簡素化して整理することも必要でしょうけれども、それと同時に全体像を加入者から把握できるようなものがあると便利だというか、そういうものがあるべきで、それをトータルに自分で見えるようにできることは非常に必要なのだろうと私も思うところではあります。
事務局から今の点についてコメントはありますでしょうか。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、今、森戸先生からも補足していただいたとおり、金融経済教育という意味では、厚労省、金融庁が協力をして、政府全体としていろいろやっていくという話もございますけれども、様々な制度がある中でそれを一緒にしろというよりは、それぞれの制度がその人にとってどういう状況にあるのか、自分がどういう制度に入っているのかとか、自分はどのぐらいもらえるのかみたいな話も含めて、見える化を進めていくところが特に大事なのだろうと思います。そこをどこまで我々として整備できるかというところは、特に見える化しづらいところもDBなどにあったりするとは思いますけれども、それぞれ取組を進めているところではあります。少なくともそういうアドバイザーの方が改善することで、ちゃんと伝わるというか、全体像がつかめるような我々としての支援というか、取組が大事なのだろうと思いますので、制度全体像がつかみやすくなる支援というか、見える化の支援という枠組みで、今後、御議論いただければと思います。
ほかに限度額の話とか、支給の繰下げの話などもいただきましたけれども、特に支給の繰下げの話は、DBについては70歳まで延ばせるようにしたところではありますが、当然各DBの判断のところがあると思います。その辺りはいかに加入者の方のニーズを捉えて、DB自体の見直しを行っていくのかというところは、ある意味労使との議論が必要なところかもしれませんけれども、仕組みを変えたところでもありますので、現状どうなっているのかを把握しながら、議論を続けていくと思います。ありがとうございます。
○森戸部会長
ありがとうございます。
ほかに御意見はいかがでしょうか。小林司委員、どうぞ。
○小林(司)委員
ありがとうございます。連合の小林司でございます。
資料を多岐にわたり御提供いただきありがとうございました。
資料1を拝見いたしまして、私的年金は公的年金の補完機能としての重要な役割を担っているということで、私たちの認識としては、とりわけ企業年金におきましては、中小・零細企業における企業年金の整備、パート・有期等労働者への企業年金の適用、これらを課題認識として強く持っております。
制度改正の効果を検証し、企業規模や雇用形態等にかかわらず多くの労働者に企業年金を適用するために必要な支援、あるいは制度改正について前向きな議論を行っていくことが重要と思っております。
資料2につきまして、資産所得倍増に関連しiDeCo制度の改革等に触れられていますが、これまでに関係会議等で述べているとおり、個人の金融資産が預金、現金で保有されている背景には、将来不安への高まりがあると思っており、まずは国民が安心できる公的年金制度を確立し、その上で補完機能を持つ私的年金制度の在り方を検討することが必要であり、筋だと思っています。
何より企業年金は退職給付由来の労働条件の性格を強く持つものである一方で、個人年金は、公的年金を補完し老後生活の多様なニーズに応えるという意味で共通点はありますが、基本的には自助努力の仕組みであり、両者は異なる性格です。これらを踏まえて貯蓄から投資へのシフトなどの目的のためにiDeCo制度だけを拙速に議論するのではなく、公的年金制度をどうしていくのか、その将来や企業年金の普及なども踏まえつつ、総合的な検討が必要と思っております。
最後に、2018年に続き2023年にも退職給付制度に関する厚生労働省の調査が実施されるものと認識していますが、企業規模や業種別の企業年金制度の実施有無だけではなく、例えば実施企業に労働組合があるのか、あるいは実施企業において適用されていない労働者の労働時間や職種の特徴、さらにこの間の制度改正による効果などについて、より詳細に把握できるような調査・分析を御検討いただければと思っております。
以上でございます。
○森戸部会長
ありがとうございました。
まずは公的年金が大事だということは言うまでもない話であります。それから、企業年金なり、私的年金の話を考えるときに、公的年金との関係を無視することができないのはもちろんでございますし、そこはちゃんと連携してやっていかなければいけないのは、言うまでもないことだと思います。
ただ、他方で、こちらはこちらで議論することもありますので、iDeCoだけ何か突出するという話ではなく、結局、全体として考えていかなければいけないのだろうとは思っております。
事務局、コメントがあれば、お願いします。
○大竹企業年金・個人年金課長
特にございませんけれども、まさにおっしゃっていただいたとおり、公的年金を基本としながら、それを補完するものとして企業年金であったり、iDeCoなどがあるということで、そういったもので多様なニーズに対応していくことだと思いますし、全体として議論が必要だというのは、全くおっしゃるとおりだと思います。
いただいたとおり、2023年に向けた調査につきましても、何らかの形で実態をちゃんと把握していくことだと思いますので、引き続きどこまでできるかを確認しながら、御相談をさせていただければと思います。
○森戸部会長
ありがとうございます。
1点、言い忘れたというか、コメントし忘れたのですけれども、必ず企業年金は退職金由来で、労働条件でありというお話が出てきて、そのことは何も否定するものではありませんけれども、ただ、そのことを前提にこれまで、それが企業年金という形でやってきた現状制度、法制度の建て付けですけれども、そういうものが今後どうあるべきかということも、広く考えていかなければいけないことはあると思いますので、そういう点も踏まえつつ、今後どうしていくべきか、どうあるべきか、どういうことが労使にとって、国民の老後所得保障にとって大事なのかということで、広く検討していければと思います。ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。藤澤委員、お願いします。
○藤澤委員
藤澤でございます。よろしくお願いします。
2年前の部会でも共通の非課税限度額があるカナダの企業年金・個人年金の動向を紹介したり、カナダの視点でコメントをすることが多かったのですが、今回もその視点でiDeCoの加入可能年齢についてコメントしたいと思います。
カナダの個人年金であるRRSPの加入可能年齢は、自営業者であっても、サラリーマンであっても、専業主婦であっても、共通の年齢になってございます。
資料2の8ページで御説明がありましたように、日本のiDeCoの加入可能年齢は、働き方によって異なっているということですので、働き方によって加入可能年齢が異なることはフェアではないと思っています。ですので、そろえたほうがいいと考えてございます。
今後、穴埋め方式のような公平な税制を目指す上でも、そろえることは必要な措置だと考えており、そういった方向で検討していただけるといいと思っています。
以上です。
○森戸部会長
ありがとうございました。
藤澤委員には、前の部会のときからカナダの制度を中心に御紹介いただいて、この政策にも非常に生かされた面がありますけれども、おっしゃったように、今、カナダとの比較で考えても、日本のiDeCoの場合、年齢がばらついていますので、資料で明らかなとおり、そこはまさに働き方によって中立的ではない部分があるのではないか、改善が必要なのではないかという御意見であったと思います。
事務局、何かありますでしょうか。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
これまでの考え方として、全ての公的年金被保険者を包含するというか、包括する上乗せの年金制度としてiDeCoを置いてきたところもございまして、だからこそ共通の要件として国民年金被保険者であることを、ある意味要件としてきたところがございますけれども、一方で、働き方が多様化する中で、このままでいいのかということもあって、加入可能年齢の引上げという御意見もいただいているのだろうと思います。
国民年金被保険者要件を全く取っ払うよりは、例えば、一定期間、公的年金に加入していることを要件にするとか、いろいろ考え方はあると思いますけれども、あくまでも公的年金の上乗せという枠組みを維持しながらやっていくことは考えられるのだろうと思っていますので、その辺り、技術的とか、実務的にも検討が必要な部分だと思いますけれども、全く無理ということではなくて、整理をすればできるのだろうと思っていますが、その辺りは事務局でも整理が必要なのかと思っています。
○森戸部会長
ありがとうございます。
今の課長の御説明は、資料2の8ページによると、法律上、国民年金があって、その上乗せが私的年金、iDeCoなり、企業年金だとなっているけれども、上乗せというのは、完全に上に乗っていなくても、広い意味で、今のお話だと、例えば過去に加入期間があったということを前提に、国民年金のほうは加入が終わったけれども、なおiDeCoには加入できるという制度も考え得るという、まだ何も決まってはいないと思いますが、そういうことでいいのですか。誘導するつもりはないのですけれども、あくまで思いつきのような感じです。
○大竹企業年金・個人年金課長 そのとおりです。国民年金は60歳までですから、60歳までしか保険料を払えませんが、iDeCoは、それで終わりになってしまうと思うのですけれども、そして、公的年金の上乗せだからこそ、いろいろと税制上の優遇措置も行われてきたということだと思いますが、ある意味そこの枠組みを維持するというのは、幾つかやり方があるのではないかということでございます。
○森戸部会長
ありがとうございます。
最初の挨拶で、森戸は意外と何にも言わないと思われたかもしれませんけれども、だんだん調子が出てきましたので、覚悟していただければと思います。
ほかにいかがでしょうか。御意見があれば、よろしくお願いします。いっぱい挙がりました。冨樫委員、先ほど挙げていましたね。先にどうぞ。
○冨樫委員
御説明いただきました私的年金制度の現状や今後の課題を踏まえ、二つほど意見を述べさせていただきたいと思います。
一つ目は、公的年金の将来的な給付水準の低下が見込まれる中で、企業年金制度は公的年金の補完と老後の生活保障としての機能を持っているため、中小・零細企業への整備、パート・有期等労働者への普及が急務と思います。その実現のために、私ども労働組合として、労使でこの制度を導入、適用拡大に向けて積極的に取り組むことはもちろんですが、事業主や金融機関等による普及促進への取り組みも重要だと思います。
退職一時金制度のみ実施する企業が増加というデータがありましたが、なぜ企業年金の普及が進まないのか、その背景をこの部会でしっかり共有いただいた上で、単なる規制緩和ではなく、普及促進の実効性の観点を持ちながら論議を行うべきだと考えます。
また、既に企業年金を実施している企業につきましては、DB、企業型DCから個人型DCへの安易な移行を防ぐということについても、併せて議論を行うべきだと考えます。
もう一つです。企業年金は掛金の拠出を行ってから実際に給付が行われるまで長期間を要するため、将来の給付が確実に行われるように適切に運営をしていく、そのためにはガバナンスの確保が極めて重要です。ですので、例えば企業型DCにおいては、過去の部会の資料で年金委員会等の会議体が設置されている企業が少ないというデータがありました。従業員に実効性のある継続投資教育が行われているのか、運営管理機関の定期的な評価に基づいて、商品ラインナップの見直し、加入者への手数料等の開示、これらが確実に行われているのか。努力義務になっていますが、この現状もしっかりと共有した上で、さらなるガバナンスの強化に向けた議論を行うべきだと考えます。
以上です。ありがとうございました。
○森戸部会長
ありがとうございます。
一番最初におっしゃった非正規の問題、働き方の多様化というのは、もちろん転職する、しないということもあるし、自営なのか、雇用なのかということもあるし、非正規であるのか、正社員であるのか、あるいはそういうキャリアを移ってきたのか、そういうことにかかわらず、フェアであるべきだというのは、共通した必要なルール、認識だろうとは思います。
1点、確認なのですけれども、先ほど小林司委員もおっしゃいましたが、企業年金が労働条件で重要な退職金由来のものであるということは、言うまでもないことなのですけれども、企業年金の中小企業なりへの普及が進まないのは問題である。別にそれはDCでもいいわけですね。必ずDBでなければいけないということではないですね。
○冨樫委員
DBの導入は、確かにハードルが高いと思います。ですが、労働組合としては、DBが柱だと考えております。中小企業に企業年金の導入が進まないことには、それなりの理由があるかと思いますが、DCは駄目とか、そういう考えではございません。
○森戸部会長
ありがとうございます。
DBだとなぜ進まないのか。もちろんDCも進んでいるわけではないと思うのですけれども、制度の特徴ごとにどういう点が特に中小企業の普及を妨げているのかということは、やはりちゃんと検討すべきだと思います。貴重な御意見ありがとうございました。
事務局、何かありますか。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
経済的な負担が重いとか、手続が負担だとか、教育が大変だとか、いろいろあって進んでいないというところもあるのだと思いますけれども、特に中小とか、働き方について偏りがないかというところは、実態を踏まえてしっかりと議論するということだと思いますので、そこは我々としても改めて準備をして、御議論いただければと思っております。
○森戸部会長
ありがとうございます。
小林洋一委員、お願いします。
○小林(洋)委員
ありがとうございます。
改めまして、今回から部会に参加させていただいております、小林と申します。商工会議所で社会保障委員会の委員を務めておりまして、本業では従業員が300人以下の中小企業の経営も行っておりますので、商工会議所の立場、もしくは中小企業の立場から意見を申し上げさせていただければと思います。
大きく4点あるのですけれども、1点目としましては、我が国は労働人口の減少等により、多くの企業が構造的な人手不足に直面しております。特に中小企業ではその傾向が強くて、従業員の採用や定着が大きな経営課題となっております。ですので、人材確保につながる取組が極めて重要なのですけれども、私的年金制度というのは、そうした中小企業でも企業の福利厚生の充実の手段として、大いにその活用が期待されていると思っております。
我が国では、公的年金を含めた年金制度全体を見ますと、国民の老後の生活費確保を図る仕組みが重層的に構築されており、国民に一定の安心感をもたらしているのは確かだと思います。ただ、その一方で、税制との関係も含めて、制度が非常に複雑化していまして、従業員や事業主の制度活用をちゅうちょさせている面もあると感じております。ぜひ仕組みをシンプルにして、分かりやすくする方向での改革を1点目としてお願いしたいと思っております。
2点目は、制度の普及という側面でございます。中小企業等々、私の周りを見回してみますと、残念ながら、私的年金制度が中小企業の間に広く知られているとは言い難いというのが実情であると思っております。制度の改革や改善策を議論する本日のような会議では、場違いな意見かもしれないのですけれども、まずは職域において、いかに普及促進を図っていけるかが重要であると思っております。
その際は、企業の経営者の理解促進はもとより、従業員一人一人で資産形成に関する考え方や取組状況等が異なる点に着目していただきたいと思います。年齢やライフスタイルなど、個々の人が置かれている状況や希望にできるだけ沿った形でアドバイスしてもらえるような、伴走型支援の仕組みが必要なのではないかと思っております。
例えば、商工会議所が運営しているDCプランナーという資格制度があるのですけれども、こういったものを活用していただきながら、普及促進を強力に推進していただければと思っております。
3点目ですが、お話がありましたiDeCoの加入可能年齢についてです。老後に向けた安定的な資産形成や厚生年金及びDBの加入可能年齢との整合性、また、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務であるということを踏まえますと、加入可能年齢について、70歳未満に引き上げるということは、妥当ではないかと思っております。
最後になりますが、特別法人税についてです。企業年金の積立金に対する課税は、企業年金の持続性や健全性を損なわせるとともに、企業年金の普及拡大という現在の政策の方向性に相反するものと考えます。加えて、拠出時、運用時は非課税、給付時に課税という、年金税制の原則に反しています。したがって、商工会議所として、10ページに記載されている厚生労働省の税制改正要望に賛同いたしますことを申し上げておきたいと思っております。
以上でございます。
○森戸部会長
ありがとうございます。
中小企業の特に現場に根差した様々な御意見、特法税のことも今日初めて触れていただいたかと思うのですけれども、非常に貴重な御意見をいただいたと思います。
逆説的ですけれども、例えば制度をシンプルにするとか、そういうものが中小企業において制度の普及なりに役立つだろう、それから、現場の労働者というのは様々だから、それにちゃんと配慮した政策が必要だろう、全くそのとおりだと思いまして、何が逆説的かと申し上げますと、中小企業労働者だからという話ですが、この話は突き詰めていけば、別に中小に限らず、規模に関係なく、全労働者について、シンプルなほうが分かりやすいだろうし、それぞれ労働者も従業員もバラエティーがあるという話になると思うので、中小企業労働者なり、中小企業事業主の方に向けての政策というのは、将来的には全体に広げていけるというか、そういうものがあると思っていて、そういう面で重要性もあると思うので、貴重な御指摘をいろいろといただいたと思って聞いておりました。
事務局、コメントがあれば、お願いします。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
まさに御指摘のとおりで、我々はどうしても制度を変えていこうという議論をしがちなところもありますけれども、今ある仕組み、特に何度か改正を繰り返して、大分しっかりとしてきたところもあるのだと思うので、それをいかにお知らせしていくかというところが大事なのだと思います。特に様々な改善をしてきたけれども、まだまだ十分にお知らせできていないというか、自分のところで企業年金を入れられるとは思っていないとか、そんなところもあるのだと思います。それをいかに周知していくかという話であったり、その中で、もう少しこういうところの手続が簡単になればみたいな議論は当然あると思いますので、手続の簡素化みたいなところも含めて、しっかり論点として出して議論していきたいと思っております。
○森戸部会長
ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。小林由紀子委員、その後、谷内委員に行きます。
○小林(由)委員
ありがとうございます。
まず初めに、改めて本部会で今後議論をしていく内容について確認させていただきたいと思います。
本日冒頭の御説明にもありましたように、一旦、足元の動きを踏まえた検討が中心ということだと理解していますが、企業年金・個人年金をめぐる課題、論点は、これまでの部会で議論してきた経緯も含めて様々ある中で、今日、御説明をいただいた資料2は、必ずしも網羅的に全体感が見えるものではなかったと感じております。
高齢期の所得確保という課題については、本日も議論が出ていますように、公的年金と私的年金の関係、私的年金については職域と個人の関係をどう考えるかなど、様々な論点があると認識をしております。そうした様々な問題が本日提示された内容とは別に整理をされ、改めて議論をされていくと認識しておりますが、その認識でよいか確認させていただきたいと思います。
その上で、個別の事項について、2点ほどコメントをさせていただきたいと思います。
1点目は、iDeCoの加入可能年齢に関してです。先ほども少し議論がありましたけれども、繰り返しとなりますが、高齢期の所得確保については、公的年金、私的年金との関係等、様々な観点から議論が必要だと認識をしております。その中で、社会保険料負担と上乗せ年金の加入資格との関係をどう考えるのかについては、改めて整理した上で、議論する必要があると考えております。
もう一点は、特別法人税の撤廃についてです。これにつきましては、これまで経団連としても繰り返し要望をしてきたところでありまして、万が一課税が復活するということがあれば、企業年金制度の普及・拡大が著しく阻害されるものと懸念しております。来年度の税制改正においては、ぜひ撤廃の実現に向けて動いていただきたいと思っておりますし、少なくとも課税停止措置の延長は確実に担保いただきたいと考えております。御対応をよろしくお願いしたいと思います。
以上です。
○森戸部会長
ありがとうございます。
後半、iDeCoの年齢の話、特法税の今後についての御意見は確かに承りました。
1点目、今日はiDeCoの加入可能年齢の話がメインなのだろうけれども、部会でこれから何をやるのかということを丁寧におっしゃったということだと思いますが、事務局、お願いします。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
まさに小林由紀子委員がおっしゃったとおりでございまして、年内は資産所得倍増プランなどが中心ということでございます。年明けになるとは思いますけれども、より包括的なというか、次の見直しに向けてどういう点を議論するかとか、そういう点については、ある意味洗い出しをして、また御議論をいただくということだと思います。今回、論点を念頭に置いていろいろとお示しをしているということではなくて、改めてそういった場はつくりたいと考えているということでございます。
○森戸部会長
ありがとうございます。
資料2に整理していただいたものは、現状は現状だと思いますけれども、小林由紀子委員がおっしゃったように、ここにないものも含めて、様々な課題がありますし、それから、既に各委員の御発言の中にも今後考えていかなければいけない課題がありまして、山積みといいますか、中期的にも、もちろん長期的にもそうですが、いろんな課題があると思います。これから事務局に整理していただきますけれども、部会ではよりよい制度をつくっていくためにどういう議論が必要なのかということを考えて、枠にはめずに、広く議論していければと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
ほかにございますか。谷内委員、お願いします。
○谷内委員
第一生命経済研究所の谷内と申します。
私は公的年金と私的年金、すなわち公私年金の役割分担を主要な研究テーマにしており、それを実現するための私的年金の税制あるいはポータビリティーの在り方などをライフワークに研究をしています。
また、私は社会に出て約四半世紀になりますが、一貫して企業年金・個人年金の世界に携わってきました。最初の10年間は年金基金の職員として、その後は金融機関に転じて、生命保険会社、銀行の信託部門、共済生協等で、延べ10年以上にわたり企業年金・個人年金の業務に従事しています。そうした経歴を買われて、恐らく今回お声がけいただいたものと推察します。
さて、各論については後日改めて述べることとして、本日は、私的年金という言葉が持つ範囲の広さとあやふやさ、そしてそれ故に生じるであろう混乱についてコメントします。私的年金は企業年金と個人年金に大きく分かれますが、両者は性格的には水と油といっても過言ではありません。先ほどから労働組合の代表の方がおっしゃっているように、企業年金は広い意味での報酬であり、企業の後払いあるいは退職金の分割払いという性格を有しています。一方、個人年金は、純正な自助努力手段あるいは貯蓄と見ることができます。
もう一つ、給付建てと掛金建てという概念があります。掛金と運用収益で給付を賄うという基本構造は同じですが、例えば資産運用環境が急激に変動したときに、掛金に影響が及ぶのか、あるいは給付に影響が及ぶのかという点で違いがあります。
企業年金と個人年金、さらにはDBとDC、これらの性格・性質の差異を踏まえずに、例えば税制や受託者責任において単一的なルールを課そうとすると、さまざまな齟齬が生じる懸念があります。
特に確定拠出年金は、企業型と個人型という二つの仕組みがあり、双方とも基本的な仕組みは同じですが、制度の持つ性格はかなり異なるため、そうした制度に対して画一的な規制を課すことが適正なのかどうかは整理したうえで議論する必要があります。
また、受託者責任についても、私が受託者責任という言葉を初めて聞いたのは、実は企業年金の世界でして、それこそ四半世紀以上も前から、特に資産運用のルールを中心に整備されてきましたが、こちらも、企業向けと個人向けとで同一のルールを課すべきかどうかは、一つ一つ丁寧に整理したうえで議論する必要があると考えます。
本日の資料1の32ページには、企業年金の実施状況が掲載されています。御覧のとおり、基本的には規模の大きい会社ほど企業年金を導入しており、規模が小さくなるほど導入割合が減っていく傾向にあります。一方で、企業年金ではなく退職一時金制度と合わせて見ると、中堅・中小企業でも制度を実施している企業の割合は7割を超えています。つまり、企業年金の実施割合が減っているからといって、企業が退職給付に期待する役割までが減っているわけではないと私は考えており、今後の企業年金を含めた私的年金の普及を考える上ではここがポイントになるのではないかと考えます。
細かい各論については、次回以降の部会で改めて意見を述べさせていただきます。
私からは以上です。
○森戸部会長
ありがとうございました。
非常に広い視野で問題を整理していただいたと思いますが、もちろん趣旨は分かりますけれども、企業年金と個人年金が水と油だとすると、企業年金・個人年金課は水と油を扱っている部署だということですが、その辺について意見があれば、伺いたいと思います。
○大竹企業年金・個人年金課長
それについてはないのですけれども、今、お話いただいたとおり、企業年金のみならず、退職一時金とか、いろんな形態があって、老後を支えているという意味もありますし、年金という話だけをとっても、年金として受け取るのか、一時金として受け取るのかみたいな議論はかつてここでもかなりやられていたと思いますが、その点も含めて、今後議論が必要だということだと思いますし、全体としての整理が必要だということだと思いますので、その辺もしっかりと議論を積み重ねていきたいと思います。
ありがとうございます。
○森戸部会長
ありがとうございます。
原田委員、お願いします。
○原田委員
日本年金数理人会の原田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は年金数理人という立場で、確定給付企業年金を中心に財政面でのチェックですとか、そういったことをやる役割を担っておるわけなのですけれども、個人的には退職給付制度のコンサルティングを長くやっていて、20年ぐらいそういう業務に携わっております。その経験といいますか、事例等も踏まえて、感じていることを併せてお話しさせていただければと思います。
まずDB、DC、どちらがいいかとか、iDeCoも含めて、どれがいいかというところは、これがいいという順位はないと思っておりまして、それぞれの制度で特徴が違っておりますので、その特徴に合わせて、企業、従業員でバランスを取って制度を運営していけばいいのではないかと思っております。
実際、そういう形でいろいろと御提案させていただいてきているところではありますけれども、例えばDB、確定給付ですと、事業主が基本的にはこういう給付をしますというお約束をしますので、幾らぐらいもらえるというところが見えやすい。最近はキャッシュバランスプランとか、リスク分担型とか、将来に給付額の変動がある制度もありますので、きれいに確定給付とまでは言えないかもしれませんけれども、それでもどのぐらいの給付が何歳から何歳まで、決まった期間は少なくとももらえる。終身年金であれば、亡くなるまでもらえるということでありますので、公的年金と併せて老後の所得の計算がしやすい面がございます。
一方で、DC、確定拠出になりますと、個人個人の方のリスク許容度といいますか、運用とか、そういったことによりまして、お金を増やしたりしていけるということがありますので、その点では、ちょっと乱暴な言い方をしますと、稼いでたくさん欲しい、それから、損をしたくないから、保障的なものでいい、こういう個々の御判断で老後の資産を準備できる。そういうところもメリットだと思いますので、必ずしもどちらがいいということでもないと思います。
DBですと集団の資産を運用しますので、個人の資産ですと、例えば私が自分のお金を運用するとしたら、どのくらいの期間運用に回せて、取崩しも含めて考えると、あまり危ない橋は渡りたくないとか、失敗をしたら取り返すチャンスがないと考えることもあるわけですけれども、集団でやるということになってくると、個々人だけのリスク許容度ではなくて、集団としてのリスク許容度が運用の基本になりますので、そうなってくると、少しリスクを取った運用ができる。DCでも集団運用的なことを導入できるのであれば、もう少しリスク許容度の高い運用ができるのではないかと思ったりもする次第です。
話が取っ散らかってしまって申し訳ないのですけれども、先ほどDBの支給開始時期の自由度が低いというお話もあったかと思うのですが、一つの制度で一つの支給開始年齢というところがどうしてもありますので、支給の期間は複数の区分をつくってできるのですけれども、いつからもらうということに関しては、基本的には一つしかないということなので、区分ごとに支給開始年齢を設定するという選択肢もできたらいいと思ったりしておりました。これは個人の感想でございます。
最後に税制についてなのですけれども、今までも皆様の意見がございましたが、制度の箱によって税の取扱いが違うというのは、よろしくないという気がしております。どれが有利でどれが不利ということではなくて、統一的な枠組みの中で税の取扱いが公平にできればいいという気はしておりますので、そこのところは、そういった方向で議論されていけばいいと思っております。
ちなみに、特法税につきましては、私も撤廃を希望している一人でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
○森戸部会長
ありがとうございました。
最後、税制の話、公平性の話もありましたし、DC、DBもどちらがいい悪いではなくて、選択肢の問題だという御指摘だったと思いますが、そうであるならば、税制にせよ、制度の選択肢にせよ、公平に選べる状況でなければいけないということだと思いますので、そういうことが本当に担保されているかということも、この部会で検討しなければいけないのだろうと思って伺っておりました。
事務局、コメントがあれば、お願いいたします。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
DC、DB、その他の仕組みを含めて、極力公平にとか、あるいはシンプルにという話もありつつ、一方で、DC、DB、経緯もあるということだと思いますし、特にDBは技術的に難易度の高い部分があったりするということだと思いますので、その辺りは、まさにそういう専門的知見のある方からの御意見をいただいて、議論を進めていきたいと思います。安直にというよりは、しっかりと専門的な議論をしていきたいと思います。
○森戸部会長
ありがとうございます。
ほかにいかいがでしょうか。ウェブ参加の委員の方もぜひお願いいたします。ウェブの人は最後のほうでなければいけないというルールはありませんので、次からがんがん最初に手を挙げていただきたいと思います。ウェブではなくて、本当は来てほしいのですけれども、どなたかありますか。山口委員、どうぞ。
○山口委員
ありがとうございます。山口です。
これまでの御議論を踏まえて、3点、お伝えさせていただきます。
今日、制度の変遷について様々な御説明をいただきました。年金の仕組み、老後の所得に関する仕組みとして、働き方とか、生活によって自分が関係する仕組みは変わるというのが実感でして、そういう前提で仕組みを見ていく必要性がより強まっていると感じました。一方で、利用者、国民の側から見ますと、それを自ら管理するとか、選択するという意識はどこまであるのかと、疑問に思う点もあります。
そのような意味で、今日のこれまでの御意見にもあって、私も同感だと思ったのですけれども、長期間の運用とか、掛金を拠出していく、長期間にわたる途中経過を知る一貫した機会が、国民、利用者の側にはないと思います。これが全体として確認できる仕組みというのは、やはり欲しいと思います。関係の事業者間では、情報連携の仕組みなども徐々に入ってきているようですけれども、国民の側から全体を通して見られるような仕組みがあるといいと感じております。1点目です。
2点目は投資教育についてです。金融審議会のタスクフォースの御紹介もありましたが、事業者の側は一定程度行っているのだけれども、受けている側はあまり受けている意識がなく、浸透させていくには課題もあるということです。今日も御意見としてありましたが、投資教育で年金の運用の手法だけですと、やはり狭いので、どちらかというと、老後の資産形成の考え方を醸成するとか、金融商品というのは、利用者から見るとあまり身近なものではないかもしれないので、適合性の観点から、知識や経験を身につけるとか、基本的な考え方を醸成していくところをベースに、運用の手法を学ぶということを継続的に行っていくことが、金融リテラシーとか、家計における生活設計とか、金銭管理の力をつけていくことにつながるのではないかと改めて思います。
もうすぐ年金を受け取るのに近い世代と、若くて、これから考えていく世代、年代ごとの課題もあるだろうと思うのですけれども、そういうことも踏まえた教育の仕組みを支援できるといいと感じました。
最後、3点目です。資料の中で、金融審議会の委員のコメントということで、顧客の最善の利益について出てきます。年金はいろいろな仕組みがあって、関係主体が非常に多岐にわたるということもあり、利用者、国民の側でそれをきちんと見て管理をしていくとなったときに、誰がどういう役割や責任を負っているのかが明らかになっている必要があると思います。それがきちんと国民の側から見えるということです。
現状、ルールで明示されなくても、行われていることではあると思うのですけれども、ルールを明確化することによって、ルールが一般化して見えるようになるという側面もあると思います。今後、横断的な責任規定についても、明確化することを検討してはいかがかと思いました。
私は専門が消費者行政、消費者法なので、利用者、国民の視点ということで、意見を述べさせていただきました。
以上です。ありがとうございます。
○森戸部会長
ありがとうございます。
まさに国民、利用者の視点に立った貴重な御意見をいただけたと思います。全てそのとおりだと思ってうなずいておりましたけれども、これは既に出た意見ですが、国民の側、加入者なり、従業員の側から全体像が分かるようなプラットフォームというか、そういうものがあるべきではないかというお話もそのとおりだと思います。
それから、投資教育に関しては、この部会でも昔からいろいろと議論はしてきておりまして、そこで私も申し上げたことがあるのですが、山口委員がおっしゃるように、投資そのものの教育ももちろん必要なのでしょうけれども、それに限らず、資産形成全体の考え方の醸成、それから、先ほど他の委員からも話がありましたが、退職金なり、企業年金なりが労働条件であるという、言わば労働条件の説明義務みたいなところとも絡んでくるので、そういうものが必要だと思います。投資教育というと、どうしても狭い話になりがちですけれども、もうちょっと広く、老後の資産形成に向けてどういうことを知っておいてもらったらいいのかという観点から考えるということは、必要だろうと思います。
他方で、いわゆる投資教育には限界があるだろうということも正直に認めて、議論するところが必要だということは、部会でも議論が出ていたところだと思います。
事務局、何かありますでしょうか。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
全体の見える化という話、特に雇用の流動化などが進む中で、しっかりと進めていく必要があるのだろうと思っていまして、それは共通のプラットフォームをつくるという話なのか、民間の事業者の方にうまく使えるような情報を提供していくという話なのか、やり方はいろいろとあるのだと思いますので、そこはどういうやり方ができるのかというところを含めて、今後、御議論をいただければと思っております。
あと、金融経済教育につきましては、こちらでも議論をさせていただいておりますし、企業における実施状況などは、今、フォローアップしているところでもありますけれども、そこでまたデータを集めつつというところもあります。
資産所得倍増プランを策定するという話は、何か制度を変えるという意味もあるのでしょうけれども、世の中の雰囲気づくりというか、こういうものは知っておかなければいけないという意味でのPRもあるのだろうと思っていますので、政府として、全体の雰囲気づくりも含めて、いろいろと取組を進めていくということだと思っております。
以上でございます。
○森戸部会長
ありがとうございます。
渡邊部会長代理、お願いします。
○渡邊部会長代理
渡邊でございます。
私からもコメントさせていただきたいと思います。大きく2点についてです。
一つは、本日の議題になっておりましたiDeCoの加入可能年齢拡大の点なのですが、その点では2点ほどございまして、現在の加入可能範囲というのは、国民年金の被保険者とされていることで、手続面において事務が効率的に行えているといった側面があるのではないかと思っています。加入可能範囲を仮に70歳まで延長するといった場合、国民年金の被保険者ではなくなるといったことから、現在の実務面において存在している利点が失われてしまうのではないか。そのことに伴って、新しい仕組みをつくる必要があるとしますと、加入可能範囲を拡大することで得られるであろう利点と、新しい仕組みをつくるということとの関係で、費用対効果を考えて制度の在り方を見直す必要があるのではないかと感じております。
また、高齢者が多くの預貯金を保有しているといったことに鑑みて、iDeCoの利用を促進するといった議論の進め方自体について、慎重であるべきではないかと思っております。若いときから制度を利用している人に対して、運用可能期間を延ばすといった考え方であれば、問題は少ないのかもしれませんが、高齢になってから制度を利用し始めるといった場合には、リスクが大きくなってしまうのではないかといったことが懸念されます。特に高齢者の場合、保有している資産を現に生活を支えるために利用する段階に入っていると見ることができますので、そのような生活を支える重要な糧が危険にさらされることがないように、慎重な姿勢が必要ではないかと思っています。
さらに高齢者になりますと、認知機能の低下が生じる可能性というものが、若い世代よりも高まってまいります。そのような高齢者に生じ得るような可能性といったことも、検討をする際に忘れてはならない視点ではないかと思っております。
大きな点としての2点目ですが、制度の見直し全般についての視点ですが、既にほかの委員、特に小林委員から御指摘がありましたが、企業年金や個人年金に関しての制度改正というのは、様々な視点から多岐にわたって行われています。ですので、必要に応じての制度の見直しがあって、やむを得ない点もあるのですが、制度が複雑化してきてしまっているといった点があろうかと思います。今後、制度の利用を促進していくといった観点からは、やはり制度を簡素化する、シンプルにして分かりやすくするといった視点が欠かせないように思います。
そういった点とも関連して、さらに働き方に中立的な制度の在り方といった点からも、本日配付されております資料2の4ページにある令和4年度税制改正の基本的考え方でも示されています、各種私的年金の共通の非課税拠出枠を設けたり、個人ごとに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けたりするといった制度の在り方について、もう少し深く検討すべき時期に来ているのではないかと思っています。
私からは以上です。
○森戸部会長
ありがとうございます。
今、私が何を思っているかというと、代理というのは好きなことを言えて一番いいということなのですけれども、懐かしんでもしようがないので、私は部会長を全うしたいと思います。
それはともかく、貴重な御意見ありがとうございました。
1点目は、後で事務局に伺いますけれども、これは新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画のほうがそうなっているから、特に文句はないですが、高齢者がお金を持っているからiDeCoの年齢を上げるみたいに読めるので、そうすると、渡邊部会長代理みたいな御意見も出てくるわけです。それは置いておいて、むしろ高齢者のためというよりは、渡邊部会長代理もおっしゃいましたけれども、これは今の若者なり、現役世代にとってもいい話で、より加入可能年齢が増えるわけですから、制度全体、国民全体に関わる話だと考えるべきではないか、その点は私も気になっていたところで、御指摘いただいたとおりだと思って伺っておりました。
制度の簡素化等々、ほかの御意見も全くそのとおりだと思うのですが、1点目、確かにiDeCoの加入者は国民年金の被保険者だからということで、そこがもし外れるとなると、事務的にややこしい話になったりしないのかという御懸念だったと思います。費用の面も含めてですが、その点は大事な点だと思いますので、事務局からコメントをお願いいたします。
○大竹企業年金・個人年金課長
ありがとうございます。
技術的・実務的な検討というのは、これからもう少ししっかりやることが必要だと思っていますけれども、いずれにせよ、今の国民年金の被保険者資格に上乗せしているというところは、比較的シンプルなのだと思います。これを見直して、例えば一定期間公的年金の保険料を拠出しているとか、加入しているとか、そういう要件にすると、それを確認する必要が出てくることになりますので、シンプルに国民年金に入っているかどうかよりは、少し大変になる可能性が高いのではないかと思います。そういう意味で、もう少し実務的な負荷とか、そういうところは、まさに実務を担っていただいている方々との調整なり、議論が必要なのだろうと思っています。
○森戸部会長
ありがとうございます。
もちろん厳密にがちがちに費用と効果を出してという話ではないのだと思いますが、ただ、どういう影響があるかとか、ここではそういう議論になったけれども、現場では、事務的にはこういうややこしいことが起こるということも、ちゃんと押さえた上でやらなければいけないと思いますので、渡邊部会長代理に御指摘いただいた点も十分に踏まえて、今後の方向性を考えていただければと思います。ありがとうございました。
島村委員からありますか。
○島村委員
立教大学の島村と申します。この部会には初めて参加させていただきます。労働法と社会保障法を専門に勉強している者でございます。
3つ申し上げたいと思います。公的年金と私的年金の両方がありますので、全体像に目を配りながら、役割分担の点も見ながら、議論していきたいというのが1点目です。
2点目として、iDeCoの加入可能年齢については、先ほど渡邊先生から御指摘があったとおり、事務の利点はあるのだと思い、その点は考慮する必要があると思うのですけれども、それと同時に、そもそも国民年金の被保険者資格とひもづける必要がどこまであるのかという点についても、私は議論していきたいと思っております。その点で、課長がおっしゃられた一定期間入っていた人であれば、元被保険者として制度に入れていくという案については、賛成の意見を持っているところです。
最後ですけれども、確定拠出年金に関しては、運用の面で主体的に運用できる人と、そうではなくて、運用に積極的になれない人がいらっしゃるかと思います。その関係で指定運用方法の仕組みなども設けられているかと思いますけれども、運用に積極的でない人に向けては、制度的介入がある程度必要になってきて、ただ、そういう介入をしていけばしていくほど、本来あるべき自ら勉強して、自らの判断で主体的に運用するというものと離れていくところもあるかと思います。その両方を見ながら、どういう加入者を典型的な加入者像だと捉えた上で制度を設計していくかということを考えていけたらよいと思っております。
まとまらない話で申し訳ございませんが、以上でございます。ありがとうございました。
○森戸部会長
ありがとうございます。非常に貴重な御意見だったと思います。
特に指定運用方法の話は、先ほど出ました2018年の話ですが、5年ぐらいたって全体がどうなっているか見直しなり、チェックが必要だという話の中にも入ってくると思いますが、島村委員がおっしゃったように、先ほど労働者も従業員も多様な人がいるということと一緒で、投資なり、資産形成に対する考え方も知識もばらばら、皆さんいろんなレベルですから、そういう中で政策の重点をどこに置いていくかというのは、確かに間違うと変な話になってしまいます。それはずっとこの部会でも考えてきた話だと思いますが、加入者を拡大するという話になっている中では、改めて考えていかなければいけないのだろうと思います。
2点目、年齢は先ほども出た話です。国民年金の上乗せとか、そもそも国民年金とリンクしているiDeCoを法的にどういうふうに整理していくのかという話だと思いますが、これはもちろん考えていかなければいけないのですけれども、事務局から何かありますでしょうか。上乗せということをどういう意味で考えるかということなのだろうとは思いますけれども、何かあれば、お願いします。
○大竹企業年金・個人年金課長
まさに税制上の優遇とか、そういう措置を取る際に、公的年金には入っていないのに、iDeCoだけに入っている人に支援というか、優遇措置を行うのはおかしいだろうという考え方もあり、ある意味同時に国民年金にも入っているし、かつiDeCoにもお支払いをいただいている方という意味で、これまでは支援をしてきたということだと思います。それが必ずしも同時である必要があるかどうかというところは、今後整理が必要なところだと思っています。
○森戸部会長
ありがとうございます。
オブザーバーの方は何かありますか。よろしいですか。
別に1人1回ずつというルールがあるわけではないのですが、ほかに発言されていない委員の方はいらっしゃいませんね。
一応皆さんから御意見をいただきまして、あと5分ぐらいなので、まとめというわけではありませんけれども、今日は様々な御意見をいただきまして、議論してほしいと要請がありましたiDeCoの加入可能年齢の拡大の話については、明確に大きな反対はなかったかと思います。
ただ、渡邊部会長代理も御指摘されましたけれども、事務的に問題が生じないのか、コストの面等も含めて、制度的にややこしくならないのかという話、それから、私も申し上げましたけれども、高齢者のためだけの話ではないでしょうということも改めて確認をしておく必要があると思います。
それから、実際に制度を考える上では、国民年金の上乗せという位置づけ、条文の書き方ということかもしれませんが、そういうことも考えなければいけないのだろうとは思います。ただ、部会全体として、絶対にやるべきではないという話ではなかったように理解しております。
それ以外にも、今日はいろいろと意見をいただきました。特別法人税の話、限度額の話、それ以外にも重要な御意見をいただいたと思います。
特に制度が複雑化してきている、いろんな制度が並立している、それぞれ事情があってそうなってはいるのですけれども、もうちょっとシンプルに、特に国民、従業員、労働者の側から分かりやすくできないかという点、それから、完全に一つの制度にはできないにしても、全体像みたいなものを分かりやすく把握できるのは、もちろん事業主側にも業界の金融機関の方等にも必要でしょうけれども、国民の側からも分かりやすいものがあればいいのではないかということも、非常に貴重な御意見であったと思います。
まとめというわけではありませんが、今日はそういう御意見をいただいた会であったと思います。
この段階で、事務局から特にコメントはありますか。
○大竹企業年金・個人年金課長
まさに今まとめていただいたような話も含めて、こちらの部会でこういう議論をいただいているという状況なり、感触なりは、今日も御紹介させていただいたような様々な議論の場がございますので、そちらに御紹介させていただいて、逆に向こう側で別途議論が行われると思いますので、そちらの状況もこちらの部会にもフィードバックできればと思います。
○森戸部会長
ありがとうございます。
ほぼ時間なのですが、よろしいでしょうか。
まだまだ議論したい点がないわけではございませんが、時間ですので、それでは、本日の議事は以上で終了といたしたいと思いますが、始まりましたので、皆さん引き続きよろしくお願いいたします。
今後の予定について、事務局からお願いいたします。
○大竹企業年金・個人年金課長
次回の部会の開催日時につきましては、改めて各委員の皆様方の御都合をお伺いした上で、正式な御案内をお送りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
○森戸部会長
ありがとうございました。
それでは、第19回社会保障審議会企業年金・個人年金部会を終了いたします。御多忙の折、お集りいただきまして、ありがとうございました。
団体