第28回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和5年10月17日(火)15:59~18:37

場所

AP新橋 3階 Aルーム

出席者

森戸部会長   渡邊部会長代理(オンライン)   岩城委員   大江委員(オンライン)

金子委員   小林(司)委員(松田代理人)   小林(由)委員   小林(洋)委員

島村委員(オンライン)   谷内委員   原田委員   藤澤委員

(オブザーバー)

鮫島企業年金連合会理事長   中村企業年金連合会運用執行理事

松下国民年金基金連合会理事長

議題

1.資産形成を促進するための環境整備(投資教育・運用関係見直し)について

2.資産運用立国について

議事

議事内容

○森戸部会長

 皆さん、こんにちは。ほぼ定刻になりましたので、ただいまより第28回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催いたします。

 お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。

 本日ですが、大江委員、島村委員、渡邊部会長代理については、オンラインにて御参加いただいております。

 また、小林司委員、冨樫委員、山口委員からは御欠席との連絡をいただいております。

 御欠席の小林司委員の代理として、日本労働組合総連合会の松田様に御出席いただいております。

 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。

 議事に入る前に、前回の部会から事務局に異動がありましたので、事務局から御報告をお願いします。

 

○海老企業年金・個人年金課長

 事務局の異動について御報告いたします。

 私、10月1日付で企業年金・個人年金課長の着任いたしました海老でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、まずは事務局から資料の確認をお願いいたします。

 

○海老企業年金・個人年金課長

 資料の確認をさせていただきます。本日の資料といたしましては、資料1「資産形成を促進するための環境整備について」、資料2「資産運用立国について」、そのほか参考資料1から7に関しては議事にあるとおりというところで御用意をしております。御確認ください。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 それでは、議題に入りたいと思いますが、カメラの方はここで退室をお願いいたします。

 本日は、議題1「資産形成を促進するための環境整備(投資教育・運用関係見直し)について」、議題2「資産運用立国について」を議題といたします。

 まずは事務局から説明をお願いいたします。

 

○海老企業年金・個人年金課長

 まず、資料の御説明に入る前に、今回「資産運用立国について」が議題に追加された背景について、私のほうから御説明をさせていただきます。本年6月に閣議決定をされました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023」において、資産運用会社やアセットオーナーのガバナンス改善・体制強化等を通じた資産運用業の抜本的な改革に関する政策プランを年内に策定するとされていたところ、この政策プランを検討するために、10月4日、内閣官房の新しい資本主義実現会議の下に資産運用立国分科会が設置されております。この分科会においてアセットオーナーの一つといたしまして企業年金についての議論が行われる見込みとなっております。分科会の庶務は、厚生労働省等の関係行政機関の協力を得て、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局が処理をするとされているところでございます。10月4日の第1回分科会には厚生労働省からは橋本年金局長が参加しております。

 今後、企業年金の実態をしっかり踏まえた上で、加入者等の利益を確保する観点から議論が進められていくということが重要だと考えております。

 このため、各委員の皆様をはじめ、関係者の御意見を伺うべく、部会長とも御相談させていただいた上で、本日の企業年金・個人年金部会の議題に、当初予定していた視点3に加えまして、「資産運用立国について」を設定させていただいたところでございます。本日の議論を踏まえまして、厚生労働省としては政府全体の議論につなげていきたいと考えておりますので、積極的かつ率直な御意見を頂戴できれば幸いでございます。

 それでは、資産運用立国に係る資料2のほうから御説明に入らせていただきます。

資料2「資産運用立国について」を御覧ください。1ページおめくりいただいて、本年6月の閣議決定についての文書について整理をさせていただいております。先ほども申し上げましたとおり、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、骨太の方針の中でも、資産運用業の高度化、アセットオーナーの機能強化を強力に推進するべく、資産運用立国の実現に向けた取組を行うとされております。具体的には、アセットオーナーのガバナンスの体制強化とかスチュワードシップ活動の実質化、資産運用力の向上、こういったことが書かれておりまして、これらの取組を含む具体的な政策プランを新しい資本主義実現会議の下で年内にまとめるということが書かれているところでございます。

 次のページを見ていただきまして、10月2日に日経サステナブルフォーラムというところで岸田総理がスピーチをしておりまして、この中でもアセットオーナーシップの改革に取り組んでいくということ、アセットオーナーに求められる役割を明確化したアセットオーナー・プリンシプルというものを来年の夏をめどに策定をしていくということ、この中で特にということで、企業年金については、加入者のための運用の見える化の充実、確定給付企業年金のための共同運用の選択肢の拡大、確定拠出年金の運用において加入者による適切な商品選択がなされるような改善、こういった観点からの検討を進めるといった発言がなされているといったところでございます。

 この際に10月4日に資産運用立国分科会が設置をされるということも表明されまして、次のページを見ていただきますと、資産運用立国分科会というのが設置されたというところでございます。

 分科会長は内閣府の特命担当大臣になっておりまして、構成員に企業年金関係からは企業年金連合会様が御参画されているという状況でございます。

 運営に関しましては、内閣官房新しい資本主義実現本部のほうで実施をするわけですが、金融庁とか厚生労働省も関わりながらやっていくといった形になっているというところでございます。

 このような背景を踏まえまして、5ページ「企業年金における取組みの方向性」ということで整理をさせていただいております。現状で資産運用立国の分科会において個別の論点が示されているわけではありませんけれども、これまでの閣議決定、あるいは総理の御発言などから、厚生労働省において企業年金における取組の方向性として関連する論点をまとめたというのがこちらのページになっております。先ほども申し上げましたとおり、視点3に今、既に含まれている論点でもありまして、今回の議論と併せて御議論いただきたいと考えております。

 こちらの資料にございますとおり、大きな項目としては3つです。1つ目はアセットオーナー・プリンシプルに関すること、2つ目はDBに関すること、3つ目は企業型DCに関することということで整理をさせていただいて、それぞれの項目について考えられる論点を記載したという形で資料を作らせていただいております。

 6ページからまとめてありますとおり、ここに記載されている項目の多くは、これまでの部会で議論あるいは検討を踏まえて運用の改善あるいは制度の改善に取り組んできているものだと認識しております。6ページ以降の資料、また、資料1の視点3にまとめたこれまでの取組、現在の取組なども御参照いただきつつ御議論いただきたいと考えております。

 資料の5ページにおいて、大項目を3つ挙げさせていただいております。1つ目の項目はアセットオーナー・プリンシプルというところで、「アセットオーナーとして求められる役割」でございます。既に規定されている忠実義務等を踏まえて、具体的な内容について検討していくということを記載しております。

 2つ目の大項目がDBに関することになります。DBに関する内容を小項目として3つ挙げさせていただいています。小項目の1つ目が「運用力の向上」でございます。丸のところにありますとおり、規模・特性に応じた運用委託機関の適切な選択、より適切な運用に向けた専門性の向上のための取組について検討していくというところでございます。

 小項目の2つ目としては「共同運用の選択肢の拡大」ということでございます。丸にありますとおり、企業年金連合会様のほうで実施している共同運用事業とか、総合型基金の活用に向けた取組について検討していくというところでございます。

 小項目3つ目は「加入者のための運用の見える化の充実」というところでございまして、規模とか特性を考慮した資産運用状況に関する情報開示の在り方について検討ということで、書かせていただいています。

 3つ目の大項目がDCでございまして、企業型確定拠出年金(企業型DC)に関して、2つ小項目を挙げさせていただいております。小項目の1つ目は「適切な商品選択に向けた制度改善」というところで、運営管理機関・DCの実施機関、加入者本人の各段階における適切な運用方法の選択を支援するための取組について検討ということで、書かせていただいております。

 小項目の2つ目が「加入者のための運用の見える化の充実」というところで、こちらについて運営管理機関・DCの実施機関が選定した運用の方法のラインナップに係る開示の促進について検討ということになっております。こういった項目について整理をさせていただいているというところでございます。

 先ほども申し上げたとおり、6ページ以降は、これに関わる論点として、令和元年あるいは平成27年の議論を挙げさせていただいておりますが、これまでもこちらの部会のほうで運用力の向上、加入者の運用の見える化、あるいはガバナンスといったことについて議論をし、制度化され、取り組んできているといったところの整理をさせていただいているという資料になってございますので、こちらを御参照に見ていただければと思います。

 資料2についての説明は以上でございます。

 引き続きまして、資料1について御説明をさせていただきます。資料1「視点3.資産形成を促進するための環境整備(投資教育・運用関係見直し)」を御覧ください。こちらは非常に大部になっておりますので、少しかいつまんで御説明をさせていただければと思います。

 本日御議論いただきたい点ということで、大きな項目としてDBの環境整備とDCの環境整備ということで項目を分けさせていただいておりますが、めくっていただいて3ページ、まずは確定給付企業年金制度(DB)の環境整備に関することでございます。議論いただきたい点を6つほど挙げておりますが、上の4つに関しては、先ほどの資産運用立国の論点でも挙がっていた論点と重複する部分が多いかと思っております。DBの運用力の向上、受託者責任などのガバナンス、小規模のDBの運用力の向上・見える化、共同運用の在り方、加入者のための運用の見える化、こういった点について御議論いただきたいと考えております。

 下の2つに関しては、これまでヒアリングとか御議論を通じて出ていた話題について書かせていただいていますが、定年延長に伴う給付減額の判定基準の検討に当たって必要な論点、保証期間の上限の検討に当たって必要な論点・課題、こういったことについて本日御議論いただければと考えております。

 次のページから資料を御用意させていただいています。めくっていただいて、まずはDBの概要と現状になります。5ページに関しては企業年金のこれまでの変遷というものをまとめているものになります。既存制度、これまで適格退職年金とか厚生年金基金とか、様々状況の変化があって今のDBとDCがあるということでまとめさせていただいているものになります。

 次のページは確定給付企業年金の制度的特徴の考え方をまとめた資料になります。これまで確定給付企業年金は適格退職年金や厚生年金基金の移行の受け皿としての位置づけなので、両制度の特徴を持っていますということをまとめさせていただいているものです。

 7ページはDCとDBの違いというところで書いているのですけれども、DCは個々の加入者の資産になる。資産の運用は個々人がやるというところ。確定給付のDBに関しては、掛金は拠出時に集団に対しての資産、運用は集団でやる。この辺の違いがありますよというところを比較させていただいている資料になります。

 次のページをおめくりいただきまして、確定給付企業年金(DB)の現状というところで現状をまとめさせていただいています。8ページ、制度数で見ますと、資産規模が100億円未満のDBが全体の約93%を占めているという状況になっております。青い部分です。一方で、保有資産額で見ますと、資産規模100億円規模のDBが全体の82%を占めている。こういった状況になっているというところでございます。

 9ページのほうは基金型とか規約型ごとに分けたものですが、保有資産の分布に関しては基金型と規約型によって多少異なるというところで、右の上のほうを見ていただきますと、基金型よりも規約型のほうがすごく小さいところが多い。もともと基金型は厚生年金基金から、規約型は適格退職年金から移行されて設立されていることが多いといった由来によるものというところでございます。

 10ページはDBの市場全体におけるシェアというところで、確定給付企業年金(DB)の国内株式保有割合は全体の中で1%程度ということで、決して大きいものではないというところが見てとれるのかなというところでございます。

 11ページは資産額の分布というところで、厚生年金基金とか公的年金に加えて、共済、確定給付年金といったものがこのぐらいの資産になっているということが見てとれる資料でございます。

 12ページはDBの運用力の向上に関する資料になります。こちらからは、これまで部会などで御議論いただいて制度として位置づけられてきている企業年金の各種の受託者責任やガバナンスに関して資料としてまとめさせていただいています。

 13ページは受託者責任でございます。受託者責任に関しては、一般的な事務として善管注意義務、忠実義務。基本的な留意事項として分散投資義務、資産構成の重視といったものが義務づけられているというところでございます。

 14ページはそれに関する条文をまとめています。

 15ページはガバナンスというところで、こちらに関しては受託保証型を除く全てのDBにおいて、運用の基本方針とか政策的資産構成割合の策定が義務づけられていて、こういった制度整備を行ってきましたということでまとめさせていただいているものです。

 16ページは具体的にどういったものを定めているのかという内容でございます。

 17ページは資産運用ガイドラインの見直しというところで、2018年にこちらのガイドラインを改訂いたしまして、資産運用委員会とか分散投資、オルタナティブ投資、運用コンサルタント、スチュワードシップ責任・ESG、加入者への説明・開示、こういったことについて必要な見直しが既に行われてきているといったことをまとめております。

 18ページ、資産運用委員会になりますが、義務づけは100億円以上というところですけれども、2021年で資産運用委員会を設置しているDBというのは改正前と比べても増えてきているという状況にあるというのが見てとれます。

 19ページは運用コンサルティング会社との契約というところで、こちらについては、全体で3割程度の契約をしているのと、資産規模が大きくなるほど契約している割合が大きくなっているというのが見てとれるという資料でございます。

 次のページからは共同運用事業についての資料をまとめております。21ページ、企業年金連合会の共同事業というころで、企業年金連合会は、法令に基づいて共同運用事業を実施しているというところで、こちらの資料をまとめさせていただいています。概況といたしましては、委託先11基金、残高184億ということになってございます。

 22ページからは総合型確定給付企業年金(総合型DB)と言われるものについての資料をまとめているものです。22ページは基金の設立形態というところで、単独と連合と総合というところで、総合に関しては、企業相互間の人的関係が密接でないというところで、かつては同業種で基金を設立する形態が多かったのですけれども、最近では業種を問わず広く事業主を募って事業を実施されているような事例も増えてきているといった状況にあるというところでございます。

 次のページを見ていただきまして、それの実際の数というところが23ページになります。総合型企業年金基金の状況ですけれども、現在実施事業所は約3.1万事業所、加入者164万人、緩やかに増加をしているという状況です。主に中小企業における確定給付企業年金の受け皿になっているという状況でございます。

 次からが加入者のためのDBの運用の見える化というところで資料を整理しております。DBの業務に関しては、事業主はDBの業務概況について加入者に周知しなければいけないということが法令で義務づけられているということを書かせていただいています。事業概況に盛り込むべき事項、周知方法に関してもこちらにまとめさせていただいているとおりでございます。

 26ページは、DBに関する事業と決算に関しては、厚生労働省に事業年度ごとに報告する義務があるというところで、厚生労働省のほうに提出をいただいているというところになっております。

 次からはDBの仕組みというところです。

 めくっていただいて28ページ。DBの仕組みのほうは、先ほどの資産運用立国との関係でとても分かりにくいのかなというところもございましたので、資料のほうを図式化して整理をさせていただいています。28ページにありますけれども、確定給付企業年金は、そもそも給付を決めた上で、その給付と財源が等しくなるように掛金を計算するという制度になっております。真ん中の棒にありますとおり、あらかじめ給付の算定方法が決まっておりまして、それに基づいて給付を賄うための掛金を予定利率を用いて計算するという仕組みになっているという制度になります。図にありますように、予定利率で運用していくわけですけれども、積立不足が発生しますと、事業主の追加拠出が必要になってくるといった仕組みというところでございます。

 次のページをめくっていただきまして、そもそも予定利率と運用の関係というのが分かりにくいのかなというところで、整理をさせていただいている資料が次の資料になります。真ん中の青いところとオレンジのところを見ていただければと思います。左側になります。運用実績が予定利率を上回る場合に関しては、剰余金を将来の不足の可能性に備えて別途積立金として積み立てると。すなわち、給付が増額されるといったものではないのですよという制度になっております。毎年積み上げた積立金が一定水準を超えたような場合には、まずは事業主の掛金が減額とか停止をされていく。こういった仕組みになっていますというところです。

 逆に運用実績が予定利率を下回る場合に関しては、不足金が一定範囲を超えた場合には事業主が追加で拠出をしなければならないという仕組みになっています。あとは毎年度の非継続基準の財政検証の中でも不足金が生じる場合には追加の拠出が必要となりますし、ここで追加の拠出がなかなか難しいというところになると減額という話もありますけれども、減額に関しては加入者の個別の同意が必要になってくる。こんな仕組みになっているというところでございます。

 下のところは予定利率と運用の関係になりますが、予定利率と運用の関係は、その図にありますとおり、予定利率を高く設定しているような場合は、収益が大きくなる分、掛金は小さくなり、相対的にこちらはリスクが高い運用になるというところでございます。

 右側は予定利率を低く設定している場合というところですが、こちらに関しては相対的にリスクが低いものとなります。どちらのリスクを取るのかというのは、各企業年金がリスク許容度を踏まえて判断していくということになります。決定するに当たっては、労使でよく御議論いただいた上で決定されていくといったものというところでございます。

 次のページからはDBの掛金の種類というところで、30ページからまとめさせていただいています。こちらは御参考に見ていただければと思いますが、30ページはDBの掛金の種類、31ページに関しては、給付減額の判定基準と手続の要件というところで、手続が厳格に定められているというところをまとめさせていただいています。

 32ページからは柔軟で弾力的な設計というところで、DB、DC、どちらかにリスクが集中するという仕組みになっているというところで、両者のリスクを分け合うことができる仕組みとして「キャッシュバランスプラン」や「リスク分担型企業年金」といった仕組みができていますよというところを整理させていただいているものです。

 33ページ、キャッシュバランスプランに関してですが、キャッシュバランスプランのイメージを書かせていただいています。こちらに関しては詳しくは申し上げませんが、確定給付型と確定拠出型の双方の特徴を併せ持っているものという仕組みになっております。

 34ページはキャッシュバランスプランの現状の導入状況というところです。確定給付型または厚生年金基金を実施している企業の23%がキャッシュバランスプランを導入しているという状況になっております。類似型を含めると約4分の1程度が導入しているといったような状況になっております。

 また、1,000人以上で見ますともう少し多くて、33%程度ございます。類似型を含めると5割ぐらいのところがキャッシュバランスプランを導入しておりまして、これらの仕組みが大企業を中心に広く普及しているといった状況が見てとれるというところでございます。

 35ページはリスク分担型企業年金制度というところで、2017年1月からできている仕組みですが、大企業を中心に今、23件の導入実績がございますというところです。

 次からが参考でDBの運用状況をまとめさせていただいています。確定給付年金の資産構成の推移ということでまとめているものですので、こちらは御参考に見ていただければというものです。

 38ページに関しては先ほどの資産構成に関して規模別に見てみたものをまとめています。こちらは資産規模によって資産構成に少し差が見られるといった状況が見てとれるというところでございます。

 39ページはオルタナティブ投資についてです。オルタナティブ投資を実施している確定給付企業年金に関しては近年増加傾向にあるといったところが数字としても見てとれるというところでございます。

 40ページは確定給付年金の利回りの推移というのをつけさせていただいています。

 次のページからスチュワードシップ活動について資料をまとめさせていただいているものになります。

 42ページを御覧ください。スチュワードシップ・コードについてということで、こちらは以前も資料としてお示しさせていただいているものです。「責任ある機関投資家」の諸原則をというところで、機関投資家が建設的な対話を通じて取り組む行動原則でございます。このスチュワードシップ・コードの中で、企業年金に関してはアセットマネジャーの一つとして関わってくるというところでございます。

 43ページがそちらを図式化したものになります。赤いところの真ん中の左側にアセットオーナーとしての年金基金等というものがございまして、投資をする相手である運用機関に対して、こちらについてスチュワードシップ・コードの活動もしていくというところでございます。

 次のページ、企業年金におけるスチュワードシップ・コードの受入れというのはどういうものかというところで、これまでも企業年金におけるスチュワードシップ・コードの受入れの意義というところで、こちらは企業年金連合会さんのほうでの検討会などで整理を進めてきていただいているというところをまとめているものになります。

 企業年金におけるスチュワードシップ・コードの受入れは、運用機関の取組を促す意義がある、受託者責任を履行する観点からも有意義だというところで、真ん中の図にあるように、企業年金が運用機関に対してモニタリングなどを通じて取組を進めていくというところが具体的な活動としてまとめられているというところです。

 45ページは、これまでの取組として、企業年金のスチュワードシップ・コード受入れ促進に向けた取組をまとめさせていただいています。先ほどの44ページにありましたとおり、スチュワードシップ・コードの受入れの意義ですとか具体的な行動例についてまとめた上で、その後、具体的なガイドラインを見直したり、ハンドブックをつくっていただいたり、あるいは政府全体の金融庁のコードの中に盛り込まれたりというところで、厚生労働省としても取り組んできたというところでございます。

 46ページがスチュワードシップ・コードに係るDB運用ガイドラインの該当部分について、赤字で線を引かせていただいているので、こちらを御参考に見ていただければと思います。

 47ページは企業年金のスチュワードシップ・コード受入れ状況というところで、こちらは最新の数字になります。9月末の数字で62の企業年金が受入れ済みという状況になってございます。

 次のページから定年延長に伴う給付減額の判定基準というところで、これは部会でのヒアリング等で御意見をいただいていたことに係る資料をまとめさせていただいているものです。

 49ページは減額の判定基準と手続要件をまとめているものになります。

 50ページは、減額基準の判定に当たっての、現価を計算するに当たってのやり方というところで、通常予測給付現価と最低積立基準額というもののイメージをまとめています。上の通常予測給付現価に関しては、予定利率は企業年金ごとのもので割り引いて設定をするということになっています。最低積立基準額に関しては、予定利率は厚生労働大臣が定めるといった形で規定をされています。

 こちらについて何が問題なのかというのを整理したものが51ページになります。定年延長時の給付減額判定例というところで、定年年齢の後ろ倒しに伴って、給付が維持されても給付の現在価値が下がってしまうということによって、これが給付減額に該当するケースがございます。その場合には手続要件として給付減額に該当する方の個別同意が必要になってくるといった課題がございます。イメージはヒアリングの際に出された資料を御参考につけさせていただいています。

 こちらに伴うものに関しまして、ヒアリングの中でかなり御意見が出ておりましたので、そちらをまとめたものが52ページです。幾つか線を引かせていただいていますが、給付減額の判定基準の在り方であったり、同意の手続の見直しであったり、手続の簡素化といったところに関して御意見が出ていると認識しております。

 53ページに関しては、令和元年における前回の改正の際の議論の中でも取り上げられておりましたが、様々御意見もございまして、引き続きの検討というところで整理をされているというところでございます。

 54ページが保証期間の上限延長になります。

 55ページを見ていただきますと、保証期間の上限というところで、確定給付企業年金の支給方法について、終身年金または有期年金になるのですが、保証期間を設ける場合には20年が限度というところになっております。

 前回の改正の際にもこちらの辺りは議論になっていて、ただし、高齢期の就労の拡大ですとか、受給の選択肢の拡大、余命の伸び、様々見ながら今後検討していく必要があるとされていたところでございます。

 56ページ、57ページはそれに関する資料というところで、余命の推移とか支給の状況というものをまとめさせていただいているものです。

 次のページからその他の論点に関する現状の資料についてまとめさせていただいております。脱退一時金の繰下げ要件のお話、60ページは非継続基準の予定利率と30年国債利回りの推移のお話、それから基金における選定代議員の考え方とか基金における運用執行理事の兼務に関しても御意見として出ておりましたので、現状について整理をさせていただいているものでございます。

 ここまでがDBに関する資料です。

 ここからがDCに関する資料になります。

 めくっていただきまして64ページになります。本日ご議論いただきたい点について、DCに関しましては、先ほど資料2で申し上げた資産運用立国に関するものというのが上の5個ぐらいです。指定運用方法とかモニタリング、運営管理機関の評価、見える化のお話、投資教育、この辺に関しては資産運用立国と重複する部分になってくるかと思います。

 その他の論点といたしましては、これまでの部会でも出ていたとおり、自動移換への対応といった話題について、資料を用意させていただいています。

 次のページからがDCの概要と現状になります。

 まずは企業型DCですけれども、66ページは企業型DCの資産構成割合の推移というところで、今、投資信託の割合が増えてきていて、2021年末では6割ぐらいになっているという状況が見てとれます。

 67ページ、元本確保型の割合に関してはどんどん減ってきているという状況にありますというところです。

 68ページは年代別に資産構成割合を見たものになります。若い世代ほど投資信託の割合が多いというところで、60%を超えているといった状況が見てとれます。

 ここまでが企業型DCでして、ここからがiDeCoに関する資料になります。

 69ページ、iDeCoの資産構成割合の推移というところです。iDeCoに関しても2021年度末では投資信託の割合が6割を超えているという状況にございます。

 70ページはiDeCoの加入者の商品の選択状況というところになります。商品の選択状況は、元本確保型を選択する比率は、全体と比較するとどんどん減ってきているというところで、2022年度末で12.6%という数字になっているという状況です。

 71ページは年代別の資産構成割合で、10代から30代、若い方のほうが投資信託の割合が多いという状況になっています。

 72ページからは適切な商品選択に関する部分に関してで、2016年にかなりいろいろと環境整備は行っていますので、そちらの内容についてまとめている資料になります。72ページの上のところを見ていただきますと、2016年の改正で盛り込まれた内容としては、継続投資教育の義務化とか、運用商品の提供数の抑制、35本に上限を課すといった内容。指定運用方法の導入、事業主による運営管理機関の評価、こういったことが2016年の改正時に盛り込まれているというところでございます。

 73ページからは企業型DCにおける事業主が果たすべき役割というところで整理をさせていただいています。こちらは企業型DCというところで書いておりますが、iDeCoに関しても準用されているというところでございます。この中で規約の周知、運管の評価、投資教育、忠実義務とか、こういった話に関して盛り込まれているというところです。

 74ページ、忠実義務に関しては、法令解釈通知において、少なくとも留意すべき事項として7項目整理をさせていただいているというところです。

 次からが指定運用方法に関する資料になります。

 76ページを見ていただきまして、指定運用方法の設定に関して、企業型DCの状況です。2016年に指定運用方法の規定が整備されまして、現状、指定運用方法を設定する事業所の割合が全体の39%。このうち元本確保型商品を設定している事業所の割合が78%というデータになってございます。

 左側の水色の図ですけれども、指定運用方法を設定している事業所の加入者のうち、実際に指定運用方法を適用されている方の割合が1割ぐらいといったデータに関する紹介です。

 77ページが指定運用方法の選定・提示プロセスについてまとめたものになります。指定運用方法に関しては、運営管理機関のほうで選定・提示、それを踏まえて労使で検討といった形になっています。その際に加入者の属性とかそういったものも踏まえて設定をするといったことが重要になってくるということをまとめているものです。

 78ページでは、実際に指定運用方法はどういったものが選定されているのかという例をお示しさせていただいております。指定運用方法については、運管が候補となる商品の選定理由を提示するというところですが、こちらにあるとおり、グローバルバランスファンドやターゲット・イヤー・ファンド、保険とか定期預金、様々こういったものが設定されているという状況です。こちらは運用方法ごとに信託報酬等の手数料などにばらつきが見られるといった状況が見てとれるというところです。

 79ページ、iDeCoに関する指定運用方法の設定です。こちらについてはiDeCoも同じように設定されまして、iDeCoのほうは半数以上が非元本確保型になっているという状況です。

 80ページはつみたてNISAの対象商品ということで、参考でつけさせていただいていますが、長期・積立・分散に適した商品を対象とするためというところで、一定の条件が課されているという資料になります。

 次が運用商品のモニタリングに関してです。

 82ページからになりますが、運営管理機関の選任と評価というところで、こちらに関しては5年に1回少なくとも運管を評価しましょうねというルールが定められていて、それに基づき評価を行うことになっています。また、運営管理機関自身は自分で選定した運用方法についてはインターネットで公表しますという仕組みになっているというところです。

 83ページが実際の具体的な評価項目についてまとめさせていただいているものになります。こちらについて、実施状況の評価を行って、内容について加入者に開示することが望ましいと申し上げさせていただいています。

 84ページが商品提供数の上限、35本上限に関して、2016年に導入されて、その後経過措置期間が終了しているのですけれども、現状としては全部上限35本以内に収まっているという状況を確認しているということでございます。

 85ページからは運用商品のモニタリングの状況です。運用商品のモニタリングを実施しているのが8割程度、ラインナップを定期的に確認しているのが半分程度といった状況になっています。

 86ページ、商品除外の方法についても改善をさせていただいて。商品の見直しに当たって除外の話というのは必ず関わりますので、こちらについて改善をさせていただいたというところで、資料をつけています。

 次からが加入者のためのDCの運用の見える化というところです。

 88ページ、DCの運用方法の見える化というところで、先ほどDBも加入者に対してちゃんと通知しましょうというところで決まっているということを申し上げましたが、DCに関しても各運用機関に関する情報を加入者等に提示しなければいけないといったことで、選定した運用方法について一覧をインターネットに公表する、こういったことが決まっているというところです。

 89ページを見ていただきますと、運管ごとに運用の方法の一覧の公表の在り方が少し異なっているというところで、トータルリターンとか信託報酬を全部比較できるような形で公表している運管さんもございますし、商品ごとに目論見書とか月次レポートを見られるような形にしているというところもございます。

 90ページがDCに係る加入者への通知というところで、DCに関しては個人の運用ということになりますので、毎年少なくとも1回、個人の資産額に関して加入者に通知しなければいけないというルールが定まっているというところです。

 次からが継続投資教育になります。

 92ページ、継続投資教育の実施率というのは今、向上している状況にあります。

 93ページは具体の内容というところですけれども、左側のほうですが、集合研修、定期発行物、動画視聴、Webセミナーが多いという状況ですが、2020年と2021年を比較すると動画とかWebセミナーが増えてきているという状況が見てとれるというところです。

 右側のほうになりますが、社員の意向を踏まえてセグメント化して、より効果的に継続投資教育を実施している例を参考につけさせていただいています。こちらの効果的な継続投資教育に関連して、94ページになりますが、加入者データの使用範囲といったところ、特に特定の加入者、例えば元本型だけの方に絞って投資教育をしてみたいといっても、今はそういった情報を事業主は使えないというところがございますので、こちらについて加入者データの活用を求めるといったような御意見もいただいているところでございます。こちらについて現状の整理ということで、今はかなり厳しくルール化されているので、この辺り、現状の規定について整理をさせていただいています。

 95ページは具体的な内容というところです。投資教育の内容は、DC制度の基本的な枠組みとか基礎知識、基本的な内容というのが多くなっているのですけれども、こちらの部会の議論でもありましたとおり、老後の生活設計、受け取り方のようなお話というところをどのぐらいやっているのだろうかというところで御議論がありましたので、真ん中のところにありますが、実際に受給に向けた老後の生活設計に係る教育というのは半数程度が現在の状態というところが見てとれるのかなというところでございます。

 96ページ、97ページに関しては、金子委員のほうから資料を参考資料でもお出しいただいておりますが、企業年金部会のほうでDCを一時金で受け取った後にそれはどうなっているのだろうかという御意見もございましたので、民間の調査として調べていただいたものをお示ししております。見ていただきますと、DCの使い道は預貯金が大部分で、受給後の資産運用・取り崩しにはまだ課題が見られるのかなというところでございます。

 次のページが継続投資教育です。先ほどのデータは事業主が継続投資教育をしています、していませんというデータだったのですが、こちらは実際に投資教育を受けていますか、受けていませんかというデータになるというところでございます。データを見ますと、iDeCoのみをやっている方というのは投資教育を受けた割合が少し低くて、企業型DCとか両方やっている方のほうが多い、保有資産額が多いほどより多いといったような状況が見てとれるというところでございます。

 98ページがiDeCoに関する投資教育の資料です。こちらに関しては、iDeCoに関して投資教育、継続投資教育として企業年金連合会さんのほうで特設サイトをつくっていただいたり、オンラインセミナーを開催いただいたりといった取組をしているというふうに御紹介をさせていただいております。

 次は金融経済教育推進機構の概要をつけています。こちらに関しては法律のほうがまだ成立していませんので、今後国会で成立をした後には設立をされていくといったところで、参考に資料をつけさせていただいています。

 次からが自動移換になります。自動移換に関しては、ヒアリングの際にもいろいろ御議論が出ていたと認識しておりますけれども、101ページ、自動移換の概要というので資料をまとめているものになります。右側の赤のところにありますとおり、自動移換になったら何が問題なのかというところですが、運用商品が売却されて、現金として管理をされてしまうと。このために運用指図が行われず、通算加入者等期間にも参入されないといったところが問題であるということが御指摘をされているというところです。

 102ページは手数料に関してまとめさせていただいているものになります。新規に自動移換になったとき、あと月額でと、あと出るときにそれぞれ手数料がかかってくるという仕組みになっています。

 103ページに関しては、これまで自動移換に関する取組というのをまとめたものになります。103ページは文字がばーっと並んでいますが、それを図式化したものが104ページです。自主的に取り組まれていたものに関して、かなり法令で盛り込んでいたり、あるいは申出がなくても様々移換ができるような仕組みを整えてきているというのが今の状況でして、黄色のところにあるとおり、制度としては様々取り入れてきているというところでございます。

 105ページを見ていただきますと、そんな中でも数としては、今、資産がある方で66万人ほどいらっしゃるという状況ですけれども、新規の、単年度の数字にはなりますが、赤く書いてあるところ「企業型・個人型の移換戻し件数」というところで、毎年5万人ぐらいはこれまで制度として整備してきた仕組みも使いつつ、自動移換ではなくなって、ちゃんと運用されるところに行っていますというのが数字として見てとれるというところです。

 106ページは自動移換の方に年に1回通知をしている通知の例というところでございます。こちらは見本の一例ですので、御参考に見ていただければと思います。

 最後、107ページは年金資産の持ち運び(ポータビリティ)というところで、自動移換に関して、制度的に移換できないということはあまりございませんで、一通り移換できるようになっていますよというところをまとめさせていただいていますので、こちらも御参考に見ていただければと思います。

 説明が長くなりましたが、以上でございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 続けて、議題2「資産運用立国について」に関連して、企業年金連合会より御説明をお願いしたいと思います。お願いします。

 

○鮫島企業年金連合会理事長

 企業年金連合会の鮫島でございます。説明の機会をいただき、誠にありがとうございます。本日は、私どもから運用執行理事の中村も出席をさせていただいております。よろしくお願いいたします。

 私ども企業年金連合会では9月29日に「『資産運用立国の実現に向けた取組』に対する提案等について」と題する提案書を公表しました。本日の参考資料2を御覧ください。本日はその概要等を御説明いたします。

 1ページはこの文書の趣旨であります。1点目、スチュワードシップ活動の実質化に関しまして、運用受託機関におけるスチュワードシップ活動のモニタリングを企業年金が協働して行う「協働モニタリング」を実施することとしまして、企業年金連合会に「企業年金スチュワードシップ推進協議会」を設立することを提案しております。

 2点目、伝えられております政府の政策プランや各方面からの御指摘に関連して、私どもが企業年金の皆様に対して実施しております支援事業の中にお役に立てるメニューがいろいろとありますので、これらをより多くの企業年金の皆様に活用していただけるよう取り組んでいくこととしています。

 最後に、できるだけ多くの関係者の皆様、特に様々な御指摘を頂戴している方々に企業年金の取組と果たすべき役割を御理解いただけるよう、企業年金の事業運営と資産運用の仕組みと現状につきまして整理をいたしました。

 私どもとしては、できるだけ多くの皆様にお読みいただき、今後受給権の保護といった観点も踏まえまして、バランスの取れた議論が行われることを願っております。

 2ページ、今回の文書公表の背景について若干御説明いたします。現在、政府において資産運用立国の実現に向けた議論が始まっておりますけれども、これまでに示された政策プランで企業年金に関係するところは、上段に記載しました6項目かと思われます。これに関連して、下段には企業年金などアセットオーナーに対する各方面からの指摘を抜粋しております。企業年金への期待があって御指摘いただいていることは私どもも理解しておりますが、中には受給権の保護やリスク管理よりもリターンの側面に重きを置いた御指摘もあるように思っております。

 政策課題が資産運用立国の実現、資産運用の高度化ということですので、受給権の保護やリスク管理といった観点は、積極的な資産運用にブレーキをかけるものとして背景に引いているということかもしれませんが、企業年金の健全な発展に向けてバランスの取れた議論になっていくだろうかという懸念を持っております。

 また、企業年金制度の設計・運営や資産運用はトレードオフの関係にある様々な要素を含んでおりまして、それを労使で議論して、関係者がそれぞれの責任においてリスクを負って運営しておりますので、その中から資産運用のリターンだけを取り出して議論することは適切だろうかという問題意識もあります。こうしたことを踏まえ、今般私どもなりに整理をし、公表させていただきました。

 以下、内容について簡単に御説明します。

 3ページ、提案書の概要をまとめております。内容は二部構成にしておりまして、左側の第一部が企業年金連合会の提案、右側の第二部が企業年金の仕組みや現状について整理したものです。

 左側の第一部では、スチュワードシップ活動の協働モニタリングと、企業年金に対する私どもの支援事業の普及拡大について提案をしております。特に先ほどの各方面からの指摘に対して、受託者責任につきましては、私どもで作成したハンドブックを活用したさらなる普及に取り組みますほか、資産運用の専門人材の育成については、私どもで入門書として作成した『資産運用の基礎』といった書籍の活用、研修セミナーの開催、相談への対応や資産運用状況に関する情報提供など、有益なコンテンツを用意しておりますので、これらの活用、普及に取り組んでまいります。

 また、規模の問題も指摘されておりますので、総合型企業年金に関する情報提供や、共同運用事業の周知など、効率的な制度運営や資産運用に関する取組を行っていきたいと考えています。

 さらに、確定拠出年金への支援につきましても、有識者の御協力をいただいて作成した各種のハンドブックや、研修、投資教育サービスなど、コンテンツを取りそろえておりますので、ぜひ多くの制度運営者の皆様に活用していただけるよう取り組んでいきたいと考えております。

 4ページ、最初の提案であります。運用受託機関のスチュワードシップ活動の協働モニタリングに関しまして、政府が進めるスチュワードシップ活動の実質化について、厚生労働省、金融庁、内閣官房からアセットオーナーの取組を促す方針が示されておりますので、それらを整理しております。

 このように取組が期待されているものの、5ページを御覧いただきますと、国内の上場株式に占める各主体の保有割合を示しておりますが、確定給付企業年金は1%しか保有しておりません。スチュワードシップ活動を推し進めるにしましても、その影響力は非常に限定的ですので、私どもではどのように効果的かつ効率的に進めたらいいのか検討いたしました。

 6ページですが、各企業年金が個別に取り組むよりも、協働して取り組むほうが効果的かつ効率的ではないかという結論に至り、先ほど御説明しました協働モニタリングと、それを継続的に実施するための枠組みとして「企業年金スチュワードシップ推進協議会」を設立することにしました。詳細はこれから検討してまいりますが、この提案に対して多くの賛同が得られれば、スチュワードシップ活動の実質化に貢献できるのではないかと考えております。

 7ページには、私どもの事業の2つの大きな柱の1つでありますナショナルセンター事業についてまとめております。先ほど御説明しましたように企業年金の事業運営や資産運用を支援する様々な取組を行っておりますが、会員数が限定的であることもありまして、なかなか行き届いていない面もあるのも事実です。今年度からは新たな取組として、非会員向け、会員でない方々の企業年金に向けまして1年間の無料トライアルの利用を実施しておりまして、お試しを通じて会員増強につなげる試みを行っております。

 また、私的年金制度普及事業としまして、会員に限定せず、様々な支援活動を展開していくことも考えております。

 こうした取組を通じてより多くの企業年金の皆様に私どもの支援事業を活用していただき、現在指摘されております課題の解決に私どもとして貢献していきたいと考えております。

 8ページからは提案書の第二部の内容になります。企業年金における事業運営や資産運用の仕組み、これまでの取組や現状について整理しております。政策プランとの関連や御指摘いただいている点を踏まえて4つのポイントにまとめております。時間の関係で全ての御説明をすることはできませんので、主な内容をピックアップして御説明しますが、お時間のあるときにぜひ提案書の本文をお読みいただければ幸いでございます。

 まず、DBの資産運用に関して、9ページですが、よく海外との比較において、日本の企業年金が最善の利益を果たしていないのではないかといった指摘があります。そこで、運用結果に最も影響を及ぼす資産構成割合について、日、米、英の企業年金を比較してみました。ここでは世界金融危機前の2006年と直近の2021年の状況を比較しております。2006年時点の米、英では株式の割合が約6割となっておりましたけれども、足元では米国が27%、英国では2割を切るところまで低下し、逆に債券の割合が大きく増加しています。直近では日、米、英共に同じような資産構成割合になっています。

 なぜこの15年で株式の割合が低く、債券中心の同じような運用となっているのか。ここには各国に共通する企業年金ならではの要因が影響しております。その要因としましては、受給権保護の観点から年金の財政基準が厳格化されたこと、国際会計基準へのコンバージョンにより、退職給付債務を母体企業の財務諸表に反映させるようになったこと、高齢化に伴う成熟度の高まり、金融資本市場におけるボラティリティーの高まりなどが挙げられます。

 こうした中で各国の企業ではDB制度を運営するコストやリスクが高まってまいりまして、長期運用を前提としたリスク資産中心の運用が難しくなり、リスクを削減するデリスキングの取組が進められてきました。その結果、債券中心の似たような運用になってきていると理解をしております。

 こうしたデータを見る限り、我が国の企業年金の資産運用は海外の企業年金と異質ということはなく、また、見劣りするものでもないと考えております。

 最後に10ページです。いろいろな場面で海外の年金運用の事例として紹介されるのが海外の公的年金の運用ですが、こちらはリスクを取った多彩な運用を行っています。これらの公的年金は、企業年金のような厳格な財政運営基準や会計基準は適用されませんので、長期運用を前提にリスクを取った運用を行うことが可能なのだと思います。

 では、このようにリスクを取った運用を行った結果、年金財政はどうなのかということですが、必ずしも健全ということではないようです。

 11ページに米国の公務員年金の財政状況をお示ししていますが、積立水準が70%台と厳しい財政状況にあることが分かります。予定利率が高いことから、掛金はもともと少なめに設定されており、不足を埋める追加掛金もなかなか入ってまいりません。このような状況では、資産運用で2桁のリターンを達成し続けなければ積立不足を解消できないと考えられ、リスクを取った運用をせざるを得ない姿が浮かび上がってきます。運用がリスクを取った多彩なものであるとしても、受給権保護の観点から健全な制度運営が行われているとは思えませんので、我が国の企業年金にとって手本とすべきものとは言えないと考えております。

 12ページ、13ページです。アセットオーナーのガバナンスや受託者責任についてもいろいろと御指摘を頂戴しておりますが、この点につきましては、ここに整理しましたように、また、先ほど事務局からも御説明がありましたが、企業年金では法令や厚生労働省のガイドライン等によりしっかりとしたガバナンス体制や受託者責任の枠組みが既に整備され、定着してきております。これに関連して、金融庁が国会に提出し、現在継続審議となっております金商法等の改正案で、顧客本位の業務運営を求める対象として、企業年金等を含めることとされていますが、この点について、企業年金関係者からは屋上屋を重ねるような規制強化につながるのではないかといった不安の声が聞かれます。実際、厚生労働省に加えて、新たに金融庁への対応を求められることになれば、規制コストが増し、現場の混乱を招くおそれもあります。

 加えて、仮に資産運用面で何らかの形でリターンの引上げ、すなわちリスクの高い運用を求められることになれば、大切な老後の年金資産を不要なリスクにさらし、企業年金の健全な運営を損なうことにもなりかねません。

 既に企業年金のデリスキングに進めてきた企業から見れば、こうしたリスクやコストの増加は制度の維持を困難にする方向の変化です。私どもとしては、企業年金への規制等は健全な運営を実現するために必要不可欠な範囲にとどめ、労使合意による制度運営と資産運用、労使の自治を尊重していただくようお願いしたいと考えております。

 14ページは、小規模な企業年金の効率的な資産運用のための合同運用についてまとめたものです。運用を受託する各業態で合同運用のスキームが既に整備されています。これらで不足ということであれば、問題の洗い出しから始める必要があると思っております。

 15ページはDB制度の設計・運営、資産運用の仕組みについて説明したものです。具体的には、母体企業の人事戦略や経営状況、財政基準、成熟度、リスク許容度など様々な要素を踏まえて、関係者が受託者責任の観点から判断することになりますが、これらの要素は企業の置かれている状況や考え方により異なっておりますし、また、トレードオフの関係にあるものが含まれておりますので、当事者が十分に議論し、それぞれの責任において決めていくしかありません。そして、実際にこのプロセスは労使合意の形で行われております。

 DB制度の役割は、労使合意において約束した年金を将来にわたって確実に支払うことに尽きます。DB年金は退職金を原資として移行したものが多く、退職金は賃金の後払いとして労使に認識されておりますので、約束した年金額が支払われなくなるリスクを抑え、確実な支払いを行うことが最も重要になります。その役割を果たすため、労使合意による運用の基本方針に基づき効率的な資産運用を粛々と実行していくことが求められているのであり、資産運用のリターンだけに着目して第三者が評価するのは難しいと考えております。

 最後に、16ページに国内の退職給付積立金の状況についてお示ししています。2021年度末で492兆円の積立金があり、そのうち55%に当たる271兆円が公的年金、19%に当たる92兆円が生命保険の個人年金保険となっています。確定給付企業年金は厚生年金基金を含めまして約70兆円ということで、割合は14%であります。

 先ほど株式市場における状況についても触れましたが、一口にアセットオーナーと言いましても様々な主体が存在し、そのプレゼンスもまちまちであります。私どもとしては、各主体がおのおのに課せられた法令や規制の下で、管理運用する資産の目的に則して受託者責任を果たし、効率的な資産運用を行っていくことが、インベストメントチェーンの機能を高めることにつながると考えております。私どもとしましても、どのような貢献ができるのか、引き続き考えてまいりたいと思っております。委員の皆様方の御理解、御支援をどうぞよろしくお願いいたします。

 

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 それでは、議題1、議題2について議論に入りたいと思います。本日の議題について御議論いただきたい点が事務局の資料の中でも示されておりましたが、議題1と議題2の内容は関連する部分もありますので、全体をまとめて御議論いただきたいと思います。ただ、御発言の際に議題2の資産運用立国に関するものと、そのほか議題1に関する御意見とを分けて明示の上、御発言いただければと思いますので、御協力よろしくお願いいたします。

 それでは、委員の皆様から御質問、御意見をいただきたいと思います。では、金子委員、お願いします。

 

○金子委員

 意見というよりは、資料1のほうで私の調査が引用されておりますので、若干補足させていただきたいと思っています。参考資料3、金子の提出した資料について御紹介させていただきます。これは抜粋の資料でございまして、数ページにまとめたものでございます。

 1ページ目を御覧いただきますと、どんな調査をやっているかというのを書いてございます。基本的に60~64歳の方を対象にしており、今日御紹介します内容として、DCの経験者に関して調査したものを資料として2ページ目以降につけてございます。

 2ページ目は、DC経験者に投資教育の受講経験に関する認識を確認したものでございます。御本人が受講したと認識しているかということでございます。これは既に事務局のほうから御紹介していただいたとおり、iDeCoのみを経験した人に関しては、投資教育を受けた経験があると回答した人が2割程度とかなり低い状況になっております。

 受講経験があるとお答えいただいた人に対して、3ページ目のような形で選択肢を設けまして、どんな項目を受講しているのかということを全てチェックしてもらっており、その回答をまとめたのが3ページ目でございます。3ページ目で言いたいのは、「投資を行うに当たって必要な知識」というのはそこそこの回答率、選択率になっているのですけれども、「リタイアメントプラニングに必要な知識」に関しては、ぐんと回答率、選択率が下がるということです。受けられた方の認識としては、リタイアメントプラニングに必要な知識はあまり受講していない、受けていないという感じの認識を持っているのだろうなということでございます。

 資料の4ページ目ですが、選択した受講項目の数によってグルーピングを行い、以下の分析をしております。3つのグループに分けているのですけれども、1つ目は「受講経験がある」と答えて、受講した内容として4項目以上挙げた方を1つのグループとしまして、この資料では投資教育の影響度が大きいグループという形で呼んでおります。2つ目が「受講経験がある」と回答し、受講した項目が3つ以下の方。これは、投資教育の影響度が小さいと表現しています。3つ目が「投資教育の受講経験がないまたは分からない」とお答えいただいた方をグルーピングしております。

 こうしてみると、今回の資料にはつけなかったのですけれども、投資教育の影響度が大きいとネーミングしたグループほど、長期に安定した資産運用を行うのに必要な知識を身につけている傾向が多かった、そういう人が傾向として多かったということが挙げられております。

 5ページ目は、DCを経験した人の中で、既に退職一時金として受給しているという方に対して、退職一時金の使い道を聞いたものでございます。これも事務局の御説明のとおり、DC資産の使い道としては預貯金が大部分であって、受給後の資産運用あるいは取り崩しには課題があるということなのですが、この点に関してもう少し別の角度から見たのが6ページ目でございます。2つの表があるのですが、上の表はDCを退職一時金として受給した人に対して、かつてDCに入っていたとき、60歳時点で投信をどの程度保有しているのか、していないのかと、それからDCを一時金としてもらった後、DC資産の使い道として預貯金のみなのか、投資商品も保有しているのかということをマトリックスにしたものでございます。

 上の表の赤枠で囲んだところは、かつてDCの中では投信を保有していたけれども、一時金としてもらった後は預貯金のみで運用していますという人の人数と割合でございまして、およそ60%だったということでございます。

 下の表は、投資教育の影響度が大きいグループだけピックアップしてみたのですが、その比率は大して変わらなかったということでございまして、これはなぜかというと、そもそもリタイアメントプラニングに関して、あまり受講していないから、ということも影響しているのではないのかなと考えております。

 以上、アンケートを通じて私が言いたいことの一つは、投資教育の中でリタイアメントプラニングに関することがあまり教えられていない、あるいは加入者に伝わっていないと思われるということです。DC加入者というのは、現役期に制度内で提供される投資教育などを通じて、長期に安定した運用を行うために必要な知識を身につけている人が多いということもアンケート、今日のこの資料にはつけなかったのですけれども、そういう傾向が示されております。

 受給期以降もライフステージに応じた安定的な資産運用を促すということは、本人あるいは社会双方にとって意義のあることなのではないかなと思っております。

 最後、蛇足ではありますが、7ページ目と8ページ目についても御説明させていただきたいと思います。7ページ目は、DC経験者に対して、DCの満足度、経験してよかったと思うかどうかということについて回答を求めたものでございます。赤の点線で囲ったところが企業型についてところですが、傾向として、DCの投資教育の影響度が大きいグループほど満足した、よかったと回答される方が多かったということです。ただ、これには裏があって、8ページ目は、満足度について3つのグループごとに投資収益率、掛金に対してどれくらい時価評価額が上だったのかということの分布を見たものです。DCを経験してよかったという方は、おおむね20%以上の収益率に分布しています。よくなかったという方の収益率は変わらなかったとか、減っていたという感じが多いということだと思います。

 このアンケート調査の中で私が思ったのは、DCを通じて投資について理解を深めて投信を保有することは大事だということです。元本確保型だけ保有している限りは、DCを利用してよくなかったと思うようなことになるのではないかと思っております。

 資料について補足させていただきました。以上でございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 金子委員から参考資料の補足説明をいただきました。非常に興味深い、いろいろ議論のベースになるようなデータがあったかなと思います。ありがとうございました。取りあえずは参考資料の御説明ということですね。

 では、谷内委員、お願いします。

 

○谷内委員

 谷内です。

 私からは資産運用立国について意見を申し上げます。資産運用立国の全体的な方向性については大いに賛同するものではあります。ただ、この件に関して、いかにも企業年金の運用が横並びかつ保守的であり、それが資産運用立国の実現を妨げているかのような報道が一部に見受けられましたが、そうした報道に対しては声を大にして異を唱えようと思っておりました。しかし、既に事務局からの資料あるいは企業年金連合会様の資料で私の申し上げたかったことはほぼ網羅されておりましたので、私としては、若干溜飲が下がった思いはあります。

 ただ、資産運用立国や資産所得倍増計画といったこの種の議論では、特に金融の専門家とされる方は、資産価値の向上や資産の極大化に重きを置く傾向があり、企業年金、とりわけDBについても同じような価値観で測りがちなのですけれども、そうでは無いと申し上げておきます。DBの目的は資産の極大化ではなくて、債務に見合った給付を履行することにあるのです。

 また、最近でこそフィデューシャリー・デューティーという言葉がもてはやされていますが、企業年金の世界では30年以上前から受託者責任というものを真摯に探求しております。そして、受託者責任を具現化したものが、まさに2001年のDB法およびDC法の創設ですし、それ以降も、受託者責任を全うするための措置は二十数年にわたりいろいろ見直しや改善がされてきたところです。

 なので、企業年金の世界では受託者責任といったところを率先して議論し対応してきたという歴史があることは、声を大にして主張しなくてはいけませんし、この前提に立って資産運用立国に貢献するのは非常に大事だと考えます。情報開示については、プランスポンサーである企業や企業基金から加入者および受給者への情報開示はもう既になされておりますので、この延長線上に立って、例えば、母体企業の財務諸表に企業年金の情報を開示する、あるいはデータを取りまとめている厚生労働省あるいは企業年金連合会なりに数字を開示させるといった形で対応することはやぶさかではないかと考えます。

 いずれにしても、企業年金は資産運用の高度化や受託者責任には真摯に取り組んできたところです。その歴史的経緯を認識した上で、資産運用立国や運用力の向上について議論していく必要があると考えます。

 私からは以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 谷内委員のおっしゃるとおりだと思いますけれども、事務局の用意していただいた資料、連合会の資料、谷内委員が今おっしゃったことが全部入っているのですが、両者ともちょっと奥ゆかしいのであまりはっきりは記載されていませんでした。谷内委員が今、言ったようなことを言いたいのだけれども、それは言っていないので、谷内委員がそれを言ってあげた、そういうコンビネーションで、察してくださいということだと思います。

 一言だけ申し上げると、まさに資産運用立国について、私は何も反対するようなものはありませんが、顧客本位が大事であるところ、ただ、企業年金は顧客というのがちょっと複雑な構造をしているというか、誰が顧客なのか、顧客と言っても、企業・従業員・受給者・企業・加入者とまた違う微妙な利益があります。会社の利益なのか、純粋に加入者の利益なのかとか、まさにガバナンスの問題とかにも関わるでしょうけれども、いろいろ複雑な構造をしておりますので、その辺が見方によっては誤解されてしまうというか、そういうところもあるのかもしれません。今、谷内委員がおっしゃったようなこと、それから今日連合会、事務局の資料で説明されていることをちゃんと理解いただければ、その全体像は分かっていただけるのかなと思います。もちろん、企業年金として資産運用立国のほうに向けてなおいろいろやれることはまだあると思いますので、その辺は議論していければと思います。

 ちょっと事務局みたいなことを言ってしまいましたかね。もし何か違うことを言ったら、言ってください。

 では、小林洋一委員、お願いします。

 

○小林(洋)委員

 御説明、ありがとうございました。

 本日は、私のほうからは、総合型企業年金基金、投資教育、資産運用立国の3点について、意見、質問を申し述べさせていただきます。

 まず、総合型企業年金基金について質問をさせていただきます。資料1の23ページに総合型企業年金基金に加入する企業が増えており、中小企業がDBを導入する際の受け皿となっているとの分析が記載されております。今後の加入促進策の検討のため、ぜひ加入企業の従業員規模別のデータもお示ししていただけるとありがたいのですが、いかがでしょうか。例えば、従業員100名以下の企業での導入が進んでいることが分かれば、そのデータを前面に出して加入を呼びかけますと、自分たちもDBを導入できると中小企業の経営者が意欲を持つのではないかと考えた次第です。御回答をお願いできればと思います。

 2点目は、投資教育についてです。意見を2つ、申し述べさせていただきます。1つ目は、資料1の92ページに継続投資教育を実施していない企業が約20%存在すると記載されております。教育を実施できていない理由の把握や分析を行い、その結果を踏まえて企業への呼びかけや必要な支援を行うなど、国や関係団体のさらなる取組が重要ではないかと思います。

 また、この点の2つ目は、iDeCo加入者への投資教育についてです。資料1の97ページによりますと、iDeCoのみを経験した人で投資教育を受けたことがないという割合が、他と比較してかなり高いのが目を引きました。国民年金基金連合会や企業年金連合会の取組に対する政府の支援強化に加えて、かねてから申し上げていますとおり、投資教育の方法が分からない企業や個人の相談に対応できる公的な個別窓口の設置、DCプランナーや社会保険労務士といった専門家の活用が必要と考えております。

 最後に、資産運用立国について、意見を申し述べます。今後、資料2の5ページに記載されている方向性に基づいて制度の詳細な検討が進められると思いますが、その際、資産運用規模が小さい基金等への配慮が必要と考えます。

 資料1の8ページによりますと、制度数ベースで資産規模100億円未満のDBが全体の約93%と多くを占めております。規模の小さなDBは運営に従事する人員が少なく、事務手続が大きな負担となっている可能性がございます。こういった点を念頭に置いて、シンプルな仕組みを構築するよう、ぜひお願いいたしたいと思います。

 以上でございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 3点いただきました。2点目、3点目は御意見ということで、1点目は質問ですので、事務局、お願いいたします。

 

○海老企業年金・個人年金課長

 御質問ありがとうございます。

 総合型基金について、従業員別、もう少し細かなデータ分析ができないかという御要望というところでございます。どのような形でできるのかというのは精査する必要がありますが、御意見を踏まえて我々も検討してみたいと思っております。ありがとうございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 では、原田委員、お願いします。

 

○原田委員

 ありがとうございます。

 まず、資産運用立国に関して、視点3と関連する内容だと思うのですが、アセットオーナー・プリンシプルという言葉も出てきましたので、それに絡めて意見、考えをお話ししたいと思います。

 連合会さんからの御説明にもありましたが、アセットオーナーという一つのくくりにはいろいろなアセットオーナーが入っているわけで、それぞれの目的とか役割は様々だと思います。その様々なアセットオーナーに対してどういうかさをかけていくのかを考えるときに、きちんとそこを認識した上で決めていかないと、本来の目的に対して逆に足を引っ張るようなルールになってしまうのではないかという懸念があると思っています。

 企業年金の役割は受益者に対して約束した給付を支払うこと、そのための資金の準備をきちんと行うことだと思います。そうすると、運用収益の極大化は目的の1番には来ないと思いますので、そういうところを履き違えないようにしていければと思います。

 予定利率の話題が先ほどありましたが、間違った報道、誤解を生むような報道はやめてほしいと思います。企業年金の予定利率というのは、現金で用意する部分と運用で稼ぐ部分、その合計で給付を払いますという仕組みになっていますから、取りあえず現金が幾ら必要なのかという前提が予定利率で、それを目標に運用するということですので、予定利率が低いと悪くて、高いといいみたいな、そういう紋切り型の判断、評価というのは絶対にあってはいけないと思っています。

 運用力の向上とは何かと考えたときに、企業年金の役割を考えると、リターンの極大化だけではなくて、リスクの極小化、もしくは目標とする収益を稼ぐことと、誤差をできるだけ小さくする、リスクを小さくするということですけれども、それも運用力の一つだと思っています。それが企業年金では一番大切な運用力なのではないかと思いますので、海外と比べるとリターンが低いとかいろいろ話はありますが、運用力とは何か、リターンの極大化だけが運用力向上という意味ではないのだというところははっきりと申し上げておきたいと思います。

 ガバナンスに関してもそういう運用に係る部分も含めてできているのではないかと個人的には思っています。今までの積み重ねの中でいろいろなルールを決めてきて、努力目標、義務、そういったことがきちんとできているのではないかと思いますし、そもそもガバナンスというのは技術力を上げることよりも、きちんとした運営をすることのために決められているものだと思います。したがって、それが直接的にリターンの向上につながるわけではないですけれども、受益者のため、受給権者のために給付をきちんとできるようにするためのガバナンスということであると思います。これを企業年金に対しては求めていくべきなのだろうと思いますので、それはかなりできているのではないかと思っております。

 いろいろなルールを重ねていくと、かっちりしたルールができるとは思うのですが、コストがかかり過ぎたり、運営に必要以上の手間がかかったりということになってくると、逆に企業年金をやめるという企業が出てくると思います。そうなると受益者の利益を完全に損なうことにつながりかねないということで、そこはバランスが非常に重要なのではないかと思います。

 運用に絡めたところで言うと、運用の見える化についても同じように結果の良し悪しだけを評価するとか、見えるようにするというのは、やはりおかしいことだと思いますし、受益者にとっての最大の利益ということを考えたときに、開示する相手は一義的に受給権者、加入者だと思います。株主への開示という話題も出ているようですが、株主等に開示すると、予定利率を上げて、掛金を抑えて、イコール人件費を減らして配当に回せと、そういう流れになってしまうことも懸念されます。そうすると、受給権の保護というところは非常にないがしろになってしまう可能性があるというところは私も危惧しているところです。

 なかなか話が出てこないと思うのであえて触れますけれども、給付減額の判定基準についてです。これはきちんと検討していくべき内容だと私も思っておりますし、我々年金数理人会からもそういうお話をさせていただきました。受給権の保護というところを第一に考えるということは言うまでもないことではありますが、先ほど御説明資料にありました給付現価という現在価値の評価の問題かなと思っておりまして、将来の給付の価値をどう測るのかという基準において、果たして年金制度の予定利率を使うのがいいのか悪いのか。そもそも予定利率を使うという発想は、損金との関係だと思うのです。損金として拠出したこれまでの積立金が必要なくなるような給付減額というのは、本当は認めるのはおかしいという発想だと思うのですが、ここまで予定利率であったり、減額の対応であったりということが自由化された中では、各制度で公平に評価するというのが大事なのではないかと思います。ですので、それを一定程度評価できるような減額の仕組みを考えるということが必要なのではないかと思います。

 保証期間の上限について少しだけ触れますと、今、保証期間というのは20年が最長になっておりまして、60歳支給開始の時代から20年になっているわけですが、80歳までです。余命が伸びてきていて、男性で60歳余命だと83歳ぐらい、女性で86歳ぐらいかと思うのですが、全部をカバーする必要はないと思うのです。ある程度の範囲で余命がカバーできていれば十分だと思うのですが、最近の高齢者雇用の見直しの中で、国の年金も65歳支給開始になっていますから、では、今度は65歳から考えればいいではないかとなると、20年で85歳。それだと、かなり余命をカバーできていることになろうかと思いますが、一方で、谷内委員のWPP理論ですとかそういうことにもありましたけれども、60歳以降の働き方の中で、公的年金の支給開始前の期間の再雇用期間、働き方を変えるということで、企業年金を一部収入の上乗せに使うといった役割も持たせてもいいのではないかと思います。退職したら、その後は純粋に老後のための退職年金とすればいいのです。

 こういう2つの役割を同時に持たせようとすると、60歳からの期間の年数で考えてもいいのではないのかと思いまして、先ほどのデータもありましたけれども、余命を見ますと、男性ですと85歳くらい、女性になると90歳くらいまでということで、30年くらいありますので、今の20年より少し延ばしてもいいのではないかと考えています。

 継続基準の予定利率というのが資料にありましたので、一言だけ申し上げますと、今、30年国債の5年平均が割引の利率になっています。この発想としては、基金、制度が解散、終了した後に、安全資産で運用して、保証された給付が実現できるというものです。こういう考え方で国債の金利となっていると理解しております。

 そうしますと、これは都合のいい考え方ですけれども、下がっているときは5年平均というのはありがたいのですが、上がってくると5年平均はちょっと残念だなと思うのですが、先ほど申し上げた安全資産で実現できるかということを考えると、必ずしも5年平均でなくてもいいのかなと思っています。ということで、例えば5年平均と1年平均のどちらか高いほうとか、それでも安全資産でその時点では運用ができればその受給権は守られるということになるので、そういう考えがあってもいいのではないのかと思います。

 ただ、当然そこの利率を上げるということは、最低積立基準額、実際に受給権者の方に支払われる金額が減るということになるので、慎重な議論が必要かなと思っておりますが、考え方としてはこういうこともあるのではないかなと思っております。

 長くなりましたが、以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 ほかの人が触れなさそうな論点に触れていただいて、資料を準備した事務局も喜んでいるのではないかと思いますけれども。

 前半のほうは谷内委員がおっしゃったようなことと同じ方向かと思います。運用力向上と言っても、運用の目的が何なのかというところを確認しなければいけないということ。それから企業年金は任意の制度でやっていますから、その辺の規制を強めたときにどういう効果があるのかということも考えなければいけない。その後の御指摘ももっともかなと思います。

 給付減額のところは、後で言う機会がなさそうなので、今、ついでに言っておこうかなと思うのですが、各団体の要望も給付減額の基準そのものを見直せというのと、定年延長のときに問題だから見直せというのと、微妙に2種類あって、それが面白いなと思っているのですが、定年延長のほうは、私の感じだと、労働条件の変更としては合理的なのに何で駄目なのだと、突き詰めるとそういうことをおっしゃっているのかなと思いました。だから、企業年金なのですけれども、企業年金連合会さんのプレゼンの中にもあったように、労働条件であり、労使自治で決めていることなのだよということとのリンクがそこにあるなと常々思っているところです。この話はまた議論があると思いますので、気になったことを一言だけコメントさせていただきました。

 ありがとうございました。

 ほかの方はいかがでしょうか。では、小林委員の代理の松田様、お願いします。

 

○松田代理

 小林(司)委員代理の松田です。

 まず、資料1についてです。企業年金のガバナンスについてですが、企業年金制度が退職給付制度として労使合意の下で実施されている制度であることを踏まえると、DB、企業型DC共に、労働組合がない場合を含め、加入者などの意思を尊重した運営がなされるよう、加入者代表代議員の適切な選出や労使合同の年金委員会などの設置を促進する必要があります。

 事業主や金融機関などによる加入者、労働組合などへの情報開示と併せて、DB運用ガイドラインやDCガバナンスハンドブックのさらなる周知が重要だと考えます。

 なお、17~18ページにある資産運用委員会は、代議員会や加入者の関与を強化する意味で重要な会議体です。事業主の負担が増えることによるDBの導入・維持の弊害、資産運用委員会の形骸化に留意しつつ、設置義務化の対象範囲をさらに拡大することを検討すべきと考えます。

 2点目は、DBの給付減額判定基準についてです。51ページのように、給付減額に該当する場合の加入者・受給者の個別同意については、納得いく説明と同意を担保するため、現行の手続を緩和すべきではないと考えます。

 続いて、資料2についてです。資産運用立国分科会に臨むに当たり、骨太方針などに書かれている文言のうち、資産運用力や運用の多様化・高度化など、定義が曖昧なものが幾つかあります。具体的に企業年金に何を求められているのかが不明確であることに留意する必要があると考えます。

 企業年金制度は労働者の老後の所得確保のため、労使合意の下で運営されているため、労働者が安定的な給付を受けられることを第一とすべきであり、スタートアップ企業への投資など政策的な目的で運用されるべきではないと考えます。

 先ほど企業年金連合会様から、日本の企業年金は海外の企業年金と比べて異質なわけでも高度化していないわけでもない、と触れられていました。仮に「運用の高度化、運用力の向上」という文言がDBの予定利率の引上げ、つまり、リスクを大きく取った上でのリターンの獲得を目指すことを指しているとすれば、企業年金の運用の目的とは乖離することになりますので、そういった政策は実施すべきではないと考えます。

 以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 給付減額などは誰も触れないだろうみたいなことを言って失礼しました。ちゃんとコメントがありました。それはそうですよね。失礼いたしました。

 御意見を承りました。1点目、労使合意の在り方は、私も前から思っているところもありますけれども、もちろん、今、松田様が御指摘なさった点もそうですし、そもそも何となく企業年金は労使合意でやっているからいいやと言うのですが、組合がしっかりあるような場合はいいですけれども、組合がないような場合は、個人、過半数代表者がやっているので、これは労働法の話、36協定とかにも共通しますが、個人が結構重い役割を担わされているという問題もあって、それを労使合意があるからいいのではないかと言っている面もありますので、そういう面も本当は検討しなければいけないのではないかなと思っております。ありがとうございました。

 では、ほかの御意見、いかがでしょうか。金子委員、お願いします。

 

○金子委員

 既に谷内委員とか原田委員とか、場合によっては松田委員もおっしゃっていることなのですけれども、声、意見が多かったということをお伝えすることも重要なことかなと思いますので、指摘していることは同じなのですが、私もちょっと御説明をさせていただきたいと思います。

 私から3点意見を申し上げたいと思います。どの点にも共通しますのが、企業の負担を大きくし過ぎると、そもそも企業年金をやめるという事態になりかねないということがございますので、企業の負担については配慮が必要だと思っています。

 その上で、1点目は資産運用立国に関するものですが、首相発言で資産運用力の向上に向けた取組が十分でないと指摘されている点です。そもそも企業年金というのは労使合意などを得て決まった将来の給付水準を確保することを目的に資産運用を行っております。したがって、企業年金における運用力の強化というのは、現在の資産構成に比べてリスクを取った積極的なポートフォリオにすることではないと思います。所与の目的達成に必要な収益率を確保するために、より低いリスクで運用することや、あるいは許容されるリスクの下でリターンの最大化を図ることであろうかと理解しております。

 そのため、結局は分散投資というか、低流動性資産を含めた分散投資を推進することなどが求められることだと思うのですが、それについては専門性を備えた組織を整備することが求められるわけでございまして、コストもかかるし、資産規模がかなり大きくない限り、得られるメリットがコストを上回らないのではないかと思いますので、このため、一律に企業年金に求めるわけにはいかないのではないかと思っております。

 2点目は、資産運用立国もそうですし、あるいは視点3、両方に挙げられている話だと思うのですが、DBの運用の見える化についてです。もしもこれが加入者のためということであれば、運用の見える化ではなくて、将来の給付額だとか自身の受取額の見える化が優先されるべきなのかなと思っています。いろんな調査でもあると思うのですが、そもそも企業年金に加入しているということ自体も知らない人とか、あるいは自分の受取額が大体どれぐらいになるかも分からない人が多いということです。この部会でも非常に優れた取組として紹介されているものがありますけれども、あれは優れた取組だからということで紹介されたので、その他のことはあまりやっていないということでございますので、まずそれが優先されるべきだと思っています。

 また、米国のように企業年金の情報開示を行い、株主が企業年金の運用について意見を言いやすくしてはどうかという意見もあるようですが、この点についても、既に上場企業の場合、年金の運用状況は、退職給付会計を通じてある程度開示されております。株主も利用できるもので、追加的な開示は株主にとって重要な情報を含むものか、私は懐疑的に見ております。また、情報開示のレベルを上げるようなことを含むのであれば、企業年金にとっても大きな負担になることも考えられます。DBの運用の改善を求めた結果としてDB自体がなくなるということにもなりかねないと憂慮しております。

 3つ目は視点3に関することです。企業型DCの適切な運用、適切な商品選択に向けた制度改善に関するものですが、運用商品のモニタリングについてコメントさせていただきたいと思います。パッシブ投信については信託報酬が高いものが提供されているといろんな批判があって、徐々に改善の方向に向かっているだろうと思うのですけれども、アクティブ投信のモニタリングについて、あまり今まで触れられていないと思いますので、一言申し上げたいと思っております。アクティブ投信というのは、DCにおける現実の資産選択の中ではかなりマイナーな存在ですが、市場の機能維持には重要な役割を果たしている存在です。ですので、DCにおいても提供されるべきだと思いますが、その際、優良な商品なのかを見分けることがパッシブ投信に比べて格段に難しいということが問題になります。企業型DCであれば、企業や運管がモニタリングを行い、問題があるのか、定期的に確認を行うべきなのかもしれませんけれども、人材やコストの問題で現実には難しいのではないかと考えております。

 そこで、資産運用会社が自社のファンドそれぞれについて、コストに見合うリターンを提供できているのかとか、あるいは商品性に合致した運用が継続可能か等を定期的に検証し、これを公表しようという動きが一部にございます。これを活用してはどうかと思っております。これはもともと英国の運用会社に求められている投信の評価制度、アセスメント・オブ・バリューという仕組みだったと思いますけれども、それを見本にしているようですが、このような取組を多くの資産運用会社に促した上で、公表された情報をモニタリングに活用することなどをやってはいかがかと感じております。

 以上でございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。いずれも非常に興味深い貴重な御指摘をいただいたと思います。見える化に関しては、確かにおっしゃるとおりで、誰のために見える化するのかという問題は当然考えなければいけないですし、これも先ほどの私の話とつながるのですけれども、労働条件なので、労働条件としての開示と重なってくるところがあるというふうにも思っております。ありがとうございました。

 では、小林由紀子委員、お願いします。

 

○小林(由)委員

 御説明ありがとうございました。

 私からは資産運用立国と資産形成促進のための環境整備、それぞれについて幾つか意見を申し上げたいと思います。

 まず、資産運用立国についてですが、資料2の冒頭で御紹介いただいた新しい資本主義のグランドデザインや岸田首相の御発言について、企業年金制度の主管元である厚生労働省としてどのように受け止め、認識をされているか、ぜひ明示的にお示しいただきたいと考えております。

 例えば資料2の2ページにおいて、資産運用会社や年金等のアセットオーナーの運用力向上が家計へのリターンを高め、投資の拡大を促していくために不可欠、という記載がありますが、法令で規定されているとおり、企業年金の目的は労使の自治、合意の下で、加入者等への給付を実現することです。安全かつ効率的な制度運営を行うことが求められる企業年金は、資本市場における投資の拡大を目的として運営されるべきものではないと認識しています。

 また、同じく2ページに「資産運用業の高度化」という記載があります。ここで触れられているような資産運用の業としての発展ということと、公的年金と相まって国民の老後の生活の安定を目指すための企業年金では、おのずと性質も求められる役割・機能も異なるのではないかと考えます。そうした観点も踏まえて、DB法、DC法を所管する厚生労働省としての見解をぜひお示しいただいて、制度運営に尽力する実施当事者をバックアップしていただきたいと思います。

 なお、実施事業主としての立場で申し上げれば、各企業にとって、企業年金はあくまでも自社の従業員福祉の向上のために実施する、報酬あるいは福利厚生制度の一部であり、高齢期を中心とした従業員の退職後生活の安心・安定を確保するために、公的年金の上乗せ給付として実施するものであります。資産運用業の発展や資本市場の活性化といった別の政策目的のために企業年金としてのあるべき制度運営がゆがめられるようなことがあってはならないと思います。また、資産サイドだけを見て、より積極的なリスクテイクを強いるような対応、政策導入はすべきではないと認識していることをあらかじめ申し上げておきたいと思います。

 次に、資産形成を促進するための環境整備に関してですが、こちらについては、DB、DC各1点と、両者共通で1点、合計3点申し上げたいと思います。

 1点目はDB年金の定年延長に伴う給付減額判定についてであります。これまでの部会でも御指摘、御議論があったとおり、現行制度の下では、定年延長に伴う給付設計の見直しにおいて、給付の絶対額が下がらない場合でも、法令上は現在価値の減少によって給付減額と判定されることになっています。

 加えて、定年延長以外でも、例えば給付設計の前提となる資格等級制度や、あるいは本人の持分の決定に反映する評価制度などを変更する場合においても給付減額に該当するケースがあります。現行の給付減額判定基準は、企業が雇用あるいは報酬制度を見直す際の足かせになる場合があると認識しています。例えば従業員・加入者が会社を退職した際に受け取る現金支給額そのものが制度変更前と比べて下がらないのであれば、減額に該当しないよう基準を見直してはどうかと考えます。

 併せて、制度変更の対象が従業員・加入者の現時点までの勤続に応じて累積した過去分の給付に関わる場合と、制度改定後の将来に向かって今後累積していく将来分に関わる給付の場合では取扱いを分けて考えることも検討すべきではないかと考えています。過去分の給付が変わらなければ給付減額には該当しないと整理をすることで、従業員・加入者にとっても、制度変更について理解、納得しやすくなると考えます。

 また、減額に関する同意取得に関しても、手続そのものの工数の他に、対象者本人への説明時には専門的な年金用語をそのまま用いる必要がある、とされていることにも課題があると認識しています。減額という言葉のマイナスイメージも相まって、一般従業員の理解、納得を得ることは、実施事業主にとって大きな負荷となっている実態があります。従業員・加入者の視点でも分かりやすい説明を事業主ができるように、判定基準と手続の双方について見直しが必要と考えます。

 2点目はDCの指定運用方法についてであります。こちらについては、先般来の関係団体ヒアリングにおいて、元本確保型以外の商品を原則とするということや、指定運用方法の設定を義務化するといった御提案がありましたが、以前の部会でも言及しましたとおり、DC法においては、個人が自己の責任において運用指図を行うということ、あるいは国民の高齢期における所得の確保に関わる自主的な努力を支援するということが規定されています。

 また、資料1の77ページに、指定運用方法の選定・提示プロセスとして、指定運用方法の選定においては、まず各社の制度における加入者集団の属性を共有することが重要と記載されています。加入者等の属性には業種・業態や職種などによる従業員の金融理解度やリスク許容度、平均的な勤続期間、あるいは事業再編の有無等による加入者の流動性の程度なども含まれ、それらが検討の起点になると認識しています。この加入者集団の属性が企業ごと、制度ごとにそれぞれ異なるということを踏まえれば、指定運用方法については、労使自治の下、各制度において最適と判断されるものを選定する仕組みとするべきであり、現行制度を維持することが適切と考えております。

 なお、蛇足ではありますが、仮に今後何らかの理由で義務化を検討するとなった場合においては、指定運用方法の選定・提示を行う運営管理機関に対して、その後も定期的に当該商品のモニタリングを実施し、加入者、実施事業主に対して適宜情報提供を行うことを義務づけて、狙った運用効果が実現できない場合は運営管理機関が主体的に見直しを提案し、対応に向けて動くということなども明確化する必要があると認識しています。運営管理機関が指定運用方法を選んで終わりにならないような仕組みとすることが大前提と考えておりますので、念のため申し添えておきたいと思います。

 最後、3点目はDB・DC共通の運用の見える化についてであります。先ほどの資産運用立国の議論にも関わる問題でありまして、繰り返しになりますが、企業年金制度が労使の自治と合意に基づいて運営されていることの趣旨や意義を踏まえれば、DB年金や企業型DCの運用の見える化は、一義的には加入者、受給権者のために行うべきものであると認識しています。

 DB年金の運用について言えば、資産サイドの運用成績だけに着目したのでは、制度運営の意義や本質を見誤ることになり、運用計画上のリスク・リターンや負債サイドも含めた財政状況全体を見た上で判断する必要があることを改めて確認しておきたいと思います。運用の見える化に関しては、こうした企業年金制度の本質を踏まえて丁寧な議論が必要と考えておりますので、ぜひ今後の対応をよろしくお願いしたいと思います。

 長くなりましたが、以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 後半3点、いずれも非常に具体的な提案もいただきましたので、今後また議論をしていきたいと思います。

 一番最初の点は、事務局に首相の発言との関係で考えを伺うものでしたので、一応お答えいただこうかな。お願いします。

 

○海老企業年金・個人年金課長

 先ほど冒頭にも今回議論として取り扱わせていただく趣旨ということを御説明させていただきましたが、もともと資産運用立国における議論の中で、企業年金というのはアセットオーナーの一つであるのは事実だと認識しております。一方で、本日、皆様からたくさん御議論いただいているとおり、企業年金に関しては、加入者等の利益を確保する、加入者のためにやっているという大きな目的があるというところがございます。

 こちらに関して、きちっと現状の実態をお伝えした上で、正確な理解に基づいて御議論いただくことが大事だと私どもとしては考えている次第でございます。本日いただいた御意見もそちらの分科会での御意見にもお伝えして、政府全体の議論につなげていきたいということで、本日設定させていただいているものでございます。

 繰り返しになりますけれども、以上でございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 では、岩城委員、お願いします。

 

○岩城委員

 ありがとうございます。

 私は、資産運用立国に関することと視点3について、重複していますが、企業型DCについて述べさせていただきます。

 私は金融機関に所属しない独立した立場で投資教育を行っていますので、皆様と少し視点が異なるかもしれませんし、委員の皆様から企業の負担を大きくするのはどうかという御意見が出ている中、DCについてではありますが、今、感じている課題についてお話しさせていただきます。

 事業主による運営管理機関の定期的な評価をすることが努力義務化されましたが、企業側が評価する視点が十分ではないと感じています。運営管理業務についての報告書を企業が受け取っていたとしても、改善に結びついていないケースが少なくないと感じています。しかし、これは仕方がない面も大きくて、企業で、知識を十分に持った人が担当となっているわけではなくて、人事や総務の人が忙しい中、勉強しながら当たるというケースも多いのが実情で、企業によってはばらつきが生じていますし、部署替えなどもあって、担当者さえよく分かっていないという企業もあります。

 そこで、資料2の15ページに事例として挙げられていますが、社内に年金委員会等の会議やプロジェクトを設けること、労使による日常的・定期的な協議や加入者の意見を聞いて、制度運営に反映できる体制をつくっていく、こういった取組を広げていくことの必要性を常々感じています。これらを整備することで、従業員と事業主が自分事としてよりよい制度運営をしていくという意識につながるということ。そして投資教育をより充実できることが期待できると思います。投資教育は運管さんに任せっ放しではなくて、従業員に寄り添った形で、老後所得の柱となる公的年金制度についてまず知り、そして3階部分のDC、あるいはDBがある会社さんならDBも。自助努力としてiDeCo、NISAを活用すること。そして人材育成や社内環境整備の方針などと併せたキャリアプラン、ライフプラン等に合ったマネープランの考え方。退職時の受け取り方や運用しながら取り崩していくことなどのリタイアメントプランまで含めた、自社の従業員のためのオリジナルセミナーを実施していくことが有用だと感じています。

 もう一つは、投資教育は一度受けても理解するのが大変難しいので、実際に運用しながら、毎年毎年投資教育を受けることで、自分で合理的な資産運用、管理ができていくようになると思います。

 これは余談になるのですけれども、大事なことなのですので伝えさえていただきます。私は、投資教育を受けていただくことで、従業員自身が、自社のDC制度の運営やラインナップには改善の余地が大いにあると気づくきっかけになるのを実感しています。先日もよりよい制度にしたいということで、その後、運管さんに商品の入替えを相談したら、入替えのための非常に高い手数料を提示されたというケースがありました。このようなことは一部の運管さんだけで、多くは協力的なのかもしれませんが、やはり問題だと思っています。あくまで従業員ファーストで運管さんから積極的に企業に提案するということも期待したいです。

 また、企業は従業員の老後の資金を含めて資産運用サポートに取り組むことで社会的責任を果たすべきだと思います。企業のこういった自発的な取組を自分の会社のホームページに掲載して、それが評価されたり、学生さんや転職者の方からそういう企業が選ばれる、という風潮をつくっていくべきではないかと思います。

 ただ、企業だけでこういう取組をしていくのは難しい側面もありますので、99ページ、金融経済教育推進機構が設立する運びとなりましたら、機構が認定する顧客の立場に立ったアドバイザーが企業の投資教育を支援していくということも可能ではないかと思っています。

 もう一点、投資信託をデフォルトファンドにすることについてですけれども、私はそうするべきだと思います。米国で401kの資産残高が積み上がっている実情というのは、米国人を配偶者に持つ方などのコンサルテーションでも感じることですが、資産所得が積み上がった相談者にとって、老後というのは、日本のように不安ばかりではなくて、自分の思い描くリタイアメントライフを実現できる楽しみが大きいのだなということも感じています。20年後の日本でもこういうふうになればいいなと強く思います。

 そのためには、投資信託をデフォルトファンドすることは必要です。今後インフレで紙幣価値が下がれば、元本確保型に資金を置くことのデメリットがより大きくなるわけですから、丁寧に投資教育を行って長期積立投資を理解してもらうことも大事ですけれども、デフォルトファンドを広く全世界の主要企業に分散投資する、低コストのインデックスファンドなどにすることによって資産運用にいざなうことも必要なのではないかと思います。

 最後にもう一点ですが、ぜひ今後の論点に入れていただければと思いまして、プログレスレポートの59ページにありますように、米国では401kの限度額が消費者物価指数に応じて変動する仕組みがあります。企業年金は公的年金を補完するものとされていますので、インフレスライドの仕組みで無限度額を引き上げることも必要ではないかと思います。

 大変長くなりましたが、以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 いろいろな点について御指摘、御意見をいただきました。投資教育は単に努力義務だからやるというのではなくて、従業員にとって、また企業にとっても何かプラスになる面があるのではないか。また、そういうふうになっていけば、より効果的にできていくのではないかという御指摘だったと思います。そのとおりだと思います。ありがとうございました。

 では、藤澤委員、お願いします。

 

○藤澤委員

 藤澤です。

 コメントを4点述べさせていただければと思います。

 1点目は、資料1の18、19ページ辺りのDBの運用力の向上のところですが、規模が小さいDB制度のほうが資産運用委員会の設置率が低かったり、運用コンサルの契約割合も低いという統計がございます。こういった規模の小さいDB制度のほうが専門人材を雇いにくい一方、そういうアドバイスが本来必要なDB制度だと思っています。そういった専門人材へのアクセスが難しいというのが実情だと思っています。

 規模の小さいDB制度に対して中立的なサポートをする場合、やっていただくのは企業年金連合会さんが候補になると思ってございます。先ほどの説明の中でも非会員向けのサービスを拡充していくという御説明がございましたが、規模の小さい制度に対して、資産運用のコンサル、相談、助言、情報提供をより強化いただけるといいと思ってございます。

 2点目がDBの運用の見える化のところです。資料1の26ページにある事業報告書の資産運用の状況等を厚生労働省で集計して、開示していただけないかと思ってございます。括弧書きで「一般に公開することは想定されていない」と記載もございますので、そういったことももしかしたら検討されているのかなと思った次第です。

 次に、カナダの事例を御紹介しますが、カナダのオンタリオ州だと、規制当局が予定利率の分布などを毎年開示しています。各制度が横並びで、ほかの制度がどれくらいの予定利率を設定しているのかというのが見える化されているような状況になってございます。

 予定利率が高いとか低いという比較は、同じ国で運用環境や経済状況が同じ中で比較すべきだと思ってございます。海外のDBと比較して高いとか低いという議論をするようなものではないと思っていますし、日本の財政運営は、特にイギリスとかアフリカに比べると、うまくいっている、やっているほうだと思ってございますので、同じ日本の中で比較をできるようなデータを出していただけるといいと思ってございます。

 こういった報告書は今でも紙で提出していると思うので、集計するが結構大変な感じもしますが、そういった横並び、相対比較ができるようなデータを示していただけるといいと思っています。

 3点目は予定利率のところで、自分が知る限り予定利率にフォーカスが当たるのはかなり久しぶりだと思ってございます。そういう意味で、予定利率の在り方みたいなことを一度整理してもいいのではないのかと思っています。先ほどほかの委員の話もお伺いして、例えば給付減額に用いる予定利率とか、非継続基準に用いる予定利率とか、幾つか予定利率が使われている場面がございますので、そこも含めて整理したらいいのではないのかと思ってございます。

 今日申し上げたいのは掛金の計算に用いるときの予定利率について、この前提は重要な前提の一つですが、誰が決めるのかというと、年金数理人ではなくて、事業主等が決めるというふうにされてございます。年金数理人の役割としては、事業主が法令に基づいて決定していることを確認することという形になってございます。

 もう少し細かい記載を紹介すると、例えば資産構成のリスクが異常に大きく、財政運営上の支障が予想される場合、その影響について事業主等に助言を行うことが望ましいという記載がございます。確認するとか助言を行うことが望ましいという表現が若干弱いのではないのかという気もしてございます。予定利率自体、先ほどの企業年金連合会さんからの説明にもございましたように、いろんな視点で決めるべきことであり、年金数理人として専門的な助言をより踏み込んでやっていく可能性もあるのではないのかと思ってございます。海外の事例で言うと、エデュケーショナルノートを出しているようなアクチュアリー会もございますので、そういうものも参考にしながら、予定利率の在り方を整理するいいタイミングだと思ってございます。

 最後、資料2の3ページのところですが、アセットオーナー・プリンシプルとは何なのかという議論はこれからだと思っていますが、プリンシプルと言うと、原則だと思うので、これはルールとは違うと思ってございます。

 一方で、資料の3ページの「特に」以降の記載を見ると、ルールとか情報開示の拡充とか、何らかの規制強化につながるような表現があるので、これはプリンシプルだということで今後議論していっていただきたいと思ってございますし、日本には小規模のDB制度が多いということを踏まえると、事業主等に過度に負担にならないように配慮した議論をしていただきたいなと思ってございます。

 以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。いずれも貴重な御指摘かと思います。予定利率の点、誤解に基づいたようなことを言われた面もあるかもしれないけれども、これを機会に予定利率に関する法令上の在り方とか、よりよい制度にしていくためにいろいろ検討できる余地はあるのかなと私も思いました。

 2点目の見える化の点について、事務局に伺おうかな。資料1の26ページに「一般に公開することは想定されていない」とわざわざ書いているのは、公開するかもしれないよという動きがあるという意味かという質問ではなかったかもしれないけれども、いかがでしょうか。

 

○海老企業年金・個人年金課長

 御質問ありがとうございます。

 部会長にもまとめていただいたのですが、そこまで深読みしていただかなくて、書いたとおりなのですけれども、もともとこれは指導監督のために頂いている報告書というところもありますので、そういう意味で、一般に公開する前提で頂いているものではないですという事実を書かせていただいているものです。

 公開の在り方というのは、本日、いろんな目的で、どういうことをどういうやり方でみたいなお話というのがまさに御議論の中なのかと思っておりますので、その中でどういう公表の在り方があるのか、藤澤委員の御意見というのも一つのやり方だということで、御意見として受け止めさせていただいた上で、検討させていただきたいと思います。

 以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 もちろん、やり方は慎重にしなければいけないでしょうけれども、何かの形で横並びの全体的なデータとか分布というのは、純粋に興味があるところですし、いろいろ考えてもいいのかもしれないというふうには思いました。ありがとうございました。

 オンラインのほうで御意見のある方はいらっしゃいますか。では、大江委員、お願いします。

 

○大江委員

 よろしくお願いします。

 DBについては、連合会さんからすばらしい資料と大賛成の内容が説明されているので、DCのところだけお話ししたいと思います。基本的には資産運用立国というのは、貿易立国とか金融立国といった産業を国が柱として育てるという話ではもともとはなく、2000兆円ある家計の金融資産の半分に当たる現預金を実体経済の資金源に回していって、企業の持続的な成長を促し、その成長でもって国民の資産も増やすということを目指しているのだと思います。そのために必要なこととしては、業者がもうかることでも、個人での一時的な投資ブームでもなくて、個人一人一人がリスクも理解した上で自分の判断で資産運用をする。それも長期にじっくりと資産運用を行える環境にしていくのが大事だと思います。その点で企業型DCの役割というのは非常に重要だと思っておりまして、その点から3点申し上げたいと思います。

 1つ目は適切な商品ラインナップについてです。前提として企業型DCにおいても加入者にとって望ましい運用というのは、高い利回りを狙って老後資産を増やすということではなくて、公的年金を補完する老後資産として、DCで目標とする額をなるべく少ないリスクで準備できるということが個人にとっては肝要なのではないかと思います。それが加入者にとって可能な環境、商品とか情報提供とか教育といったアプローチで実現をすることが事業主、そしてサポートする運営管理機関に求められているということだと思います。

 そういった意味で、誰もが提示されている商品の特性、リスクを理解して、自分の目標に合った商品を選択できる環境ということから言いますと、厳選した商品ラインナップが欠かせないと考えております。

 かつて35本という上限の議論をしていた当時に、企業型DCの御担当者の方々に、自社の加入者が理解できて識別できる本数ということを調査で伺ったことがあるのですけれども、そのときの最頻値は10本でございました。常に新しい加入者が入ってきて、かつ資産運用に関心が高い人ばかりではない企業型DCにおいては、一つの参考になる数値ではないかと思っています。

 2点目、デフォルトファンドについて。今回資料を提出させていただいておりまして、資料4の3ページの上段を御覧いただけますでしょうか。投資信託のいわゆる指定運用方法の設定比率が上がってきていまして、特にターゲットデータファンドが8.5と増えてきております。この円グラフで見ていただきたいのは、「設定する必要がない」とか、まだ設定しないと御回答されている事業主の割合が35%と、それなりに高いということです。「設定しない」と御回答されている事業主さんにその理由を聞いているのが下です。「全員配分指定するので必要ない」「資産配分は加入者自身が決めるもので、会社が決めるものではないと考えている」というのが主な理由となっています。DCの加入者自らが年金資産を運用する制度の趣旨に沿って運営されているとも言えるので、これらの事業主に指定運用方法を義務化するというのはちょっと適切ではないと考えます。

 気になるのが次の4ページです。指定運用方法と継続教育の実施状況です。投資教育と言うと加入時教育も入ってしまうと思うので、過去3年間に継続教育を実施したケースと「継続教育の実施」として扱い、それと指定運用方法とクロス分析したものになります。指定運用方法をターゲットデータファンドにした事業主さんでの継続教育の実施率を見ていただきますと、定期預金であるとか配分固定型のバランス型を指定運用方法にしている事業主さんよりも低いという結果になっております。

 法令解釈通知では、指定を設定したとしても、その商品、指定運用方法で運用し始めた後もこの運用のままでいいのかということを考えさせるような継続的な情報提供をすべきだ、継続教育をすべきだということになっていますけれども、この結果からは、何となく定年までお任せの運用に乗せたので、継続教育はもうしなくていいと誤解をしているようにも見受けられます。これでは資産運用立国というところにも寄与しないのではないかと考えます。

 一人一人が運用していくという資産運用立国ということでいけば、企業型DCの職域での投資教育の価値、継続教育の価値というのは非常に大事にすべきだと考えています。過去20年以上にわたって、企業型DCを導入している会社に勤めたということで、個人としては別に投資信託に関心があったわけでも資産運用に関心があったわけでもない方が、金融商品とか資産運用についての基礎を学んで、こつこつ積み立てて投資と関わっていく経験を少額でしながら、自分なりの付き合い方を身につける場になってきました。実際に投資信託の割合も増えてきています。

 自分が商品を選ばなければいけないという状況になったからこそ、多くの方が資産運用の基礎などが身についたと思いますし、継続教育が義務だからこそ、事業主はそれに時間と費用を割いてサポートしてきたという面があるのではないかと思います。このことはNISAが普及していくことに側面から寄与してきたのではないかと思いますし、これからもこれはよい影響を与えるのではないかと考えます。

 3つ目、継続教育についてです。提出資料の5ページ上段は継続教育の実施率ですが、6割ぐらいです。私どもは過去15年この調査を実施しておりますが、大体実施率は変わらない実態です。比較的規模の小さい事業主もカバーしているため、連合会さんの調査結果と比べると低いのですけれども、実態に近いと思われます。

 次のページに、今回初めて継続教育について継続的に情報提供しているツールというものについても聞いてみました。ファイルの掲載、動画コンテンツの掲載といった、本人がアクションしないと情報が得られないツールが残念ながら上位でした。これでは関心の高いごく一部の加入者にしか情報が届いておらず、継続教育として有効とは言えないのではないかと思います。

 実際に加入者側の継続教育ということでの受けたという認識については、下の棒グラフ、年金シニアプラン研究機構の研究会に参画させていただいたときの調査結果を載せておりますが、残念ながらこれまでに継続的に何回か受けたという濃い緑は1割程度と大変低くなっております。

 先ほど岩城委員から教育を1回受けただけでは足りないというお話があって、私も本当にそうだと思います。私どものNPOではDCエクセレントカンパニーということで、非常に熱心に制度運営されている会社を表彰する活動を行っているのですが、継続教育に関する審査基準の中の一つに10年に一度は全員継続教育を受講するということを入れております。無関心であっても、10年に1回は自分の老後に向けた資産準備であるDCについて向き合って、このままでいいか考える機会を事業主として提供する。それは必要なのではないかと考えております。

 最後に、加入者にとって適切な商品ラインナップという観点で実務的な課題と改善を申し上げたいと思います。2016年改正で商品に関して除外であるとかモニタリングが進んだ面はあると思います。ただ、先ほど御提示した資料2ページで見ていただいて分かるとおり、商品見直しについて、特に規模の小さな企業の御担当者は、運営管理機関と対話できる情報・知識が不足していると感じています。運営管理機関と事業主側の情報の非対称性がいまだ大きいというのは事実かと思います。

 これを支援する意味で、事務局から御説明いただいた資料1の89ページ、運営管理機関が公開しているユニバースは、投資対象が同じ運用商品での比較をして、自社に提示されている商品が適切かというのに使うということができるのですけれども、これはごくごく一部の大企業にしか活用されていません。受託先のDC担当者にその存在は多分知らされていないでしょうし、掲載されているのもサイトの奥深くにひっそりとあって、比較しにくいで載っているという状態です。これは顧客本位、加入者本位とは言えないのではないかと思います。

 一方で、金融庁さんとか厚生労働省さんも、これが公表されているわけですから、信託報酬の一物二価ということが問題だとすれば、非常に問題がある商品を提示している、またはラインナップにあるところにヒアリングをしていただくと、商品ラインナップ全体の底上げになるのではないかと思います。

 最後に除外についてです。適切ではない商品の除外について、今、見ていただいた上段であるとか下段にもあるのですが、実務上の課題を挙げられている事業主さんが多くございます。それは除外商品保有者の情報が個人情報保護に当たるということで、事業主に提供されていないということです。該当者にピンポイントで案内ができないので、関心が低い加入者ほど運用成績の振るわない高いコストの商品を持ち続けてしまうということになっています。実際には運営管理機関に事業主が費用を払って運営管理機関から案内するとか、事業会社が全社員のメールアドレスを運営管理機関に提供して御案内するというケースも中にはあると聞いていますが、実務的な費用負担といった面から個別にかつ継続的にフォローして該当者に案内するということができない状況であります。これは制度運営上、必要な情報提供というふうに整理していただいて課題の解消を図っていただきたいと思います。

 長くなりましてすみません。以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 資料4の御紹介もいただきました。それから非常に貴重な御指摘をたくさんいただいたと思います。資産運用立国の話、企業年金はDBのことが割と言われている感じだけれども、実は企業型DCのここにそのベースというか、草の根、ここから実は資産運用立国につながる面があるのではないかという非常に貴重な御指摘だったと思います。ありがとうございました。

 では、島村委員は何かありますか。

 

○島村委員

 どうもありがとうございます。

 私のほうからは資産運用立国の話でもあった指定運用方法について、幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。

 現状では指定運用方法の設定は任意であるため、指定運用方法が設定されていない場合が6割ぐらいとあったと思います。そうすると、運用商品が選定されていないので運用がなされていなくて、手数料だけが引かれていく。これだとDCをやっているのにもったいないのではないかと思っています。

 DC法の1条の目的である公的年金給付と相まって老後を支えるという方途に足り得ていないのではないかと思っています。自分で指図できるはずなのにやっていないのが悪いとして、自己責任という言葉で切り捨ててしまってよいのかという問題意識があります。パターナリスティックなのかもしれないのですが、せっかく制度に加入しているのだから、最低限の運用はなされるように制度はつくっておく必要があって、最低限の運用を何にするかについては、運管さんのほうで企業としっかり話し合って決めるように、指定運用方法の設定を義務化することも検討すべきかと思います。すべての企業に対して義務化するかについてはさきほど大江委員からいただいたようにいろんな意見がありうるので、たとえば指定運用方法を設定しないならその理由を開示させるみたいな仕組みとかも考えてよいのではないかと思っています。

 どの商品を指定運用方法にするかを運管が事業主とともに決めるということが企業型では重要かと思っていて、商品を決めなければいけないというところを事業主にお願いすることで、運管と商品について密に対話するようにもなって、知識も増えて、事業主による運管の評価とかもしやすくなるのではないかと考えています。

 この指定運用方法の仕組みについてもう少し踏み込んで考えてみると、今の仕組みでは、指定運用方法が動き出すために、規約によるとは思うのですが、最低でも3か月とか2週間といった特定期間や猶予期間というのがあります。そもそも運用しない期間を制度として内包してしまってよいのかという問題意識があります。リマインドしてもほとんどの人は動かずに、結局、指定運用方法に流れるというデータもあるみたいですので、運用しない空白の期間をできるだけなくするとか、短縮することができるのであれば、それを考えていきたいと思っています。

 今の議論とも関係して、企業や運管が特定商品を推奨してはいけないという規制についても少し考える必要があるのかなと思っておりまして、事業主としてナンバーワンと考える運用方法を指定運用方法として選ぶという形で、指定運用方法に対してもう少し積極的な意味づけを与えるというのも一つの選択肢になるのではないかと思っております。

これまで指定運用方法の強化が必要なのではないかという趣旨の意見を述べさせていただいているのですが、指定運用方法を強化するということは、投資教育はもう要らないということを言いたいわけでは全くございません。指定運用方法によるものであれ、実際に運用を始めることで運用の結果が数値となって現れて運用に関心を持つようになるケースとか、いろんなライフイベントがある中で老後の資産形成の重要性に目覚めるケースとかもあるかと思います。加入者が折に触れて運用に関心を持って、運用に積極的になるような仕掛けを至るところに散りばめていくことが大事で、その意味で継続教育の果たすべき役割というのは今なお非常に大きいものだと認識しています。

 すみません。長くなりました。以上になります。ありがとうございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 指定運用方法についての御意見をいただきました。大江委員と結論的には違うことをおっしゃったのかもしれないけれども、でも、継続教育の重要性みたいなところは同じで、非常に興味深く伺っておりました。指定運用方法の件はもちろん議論しなければいけません。他方で、これは島村委員もおっしゃったことだと思いますが、未指図で全く運用されない資産とかが出てしまうというのは全く違う問題だと思います。指定運用方法と絡むのだけれども、それはそれで制度の趣旨としてどうなのという気はいたしますので、その辺、何かうまく制度をつくれればいいかなと思いました。

 ありがとうございました。

 渡邊代理はいかがですか。

 

○渡邊部会長代理

 もうお時間がいっぱいになってきているのですが、私からは2点ほどコメントをさせてください。1点目は資産運用立国に関してですが、もう既にほかの委員、何人も御指摘いただいているところですが、企業年金については、公的年金の補完的機能といったところが重要視されるようになってきています。そうしますと、受給者の生活保障としての給付といった役割、機能が重視されておりますので、そういった機能が損なわれないように規制の在り方というものが検討される必要があるだろうと思っております。

 もう一点は先ほどからお話に出ております投資教育との関係ですが、投資教育の重要性は私も重々承知しておりますし、当然のことと考えておりますが、投資教育に興味関心がないとか、投資教育を受けていないといったところで、知識がないということで行動に移すことができないといった環境の在り方自体も問題ではないかなと思っております。ですので、そういった知識が十分ではないといった人たちをフォローするような仕組みというものが検討される必要があるだろうと思います。それが中立、公平な立場から個別具体的な状況に応じて相談できる、そういった窓口の設置とか、そういったものも検討される必要があるのではないかと感じているところです。

 私からは以上です。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。2点、ある意味今日の議論の全体を非常に簡潔にまとめていただいたかと思います。ありがとうございます。

 では、オブザーバーから、国基連の松下理事長、お願いします。

 

○松下国民年金基金連合会理事長

 2点申し上げたいと思います。

 1点目は自動移換者の問題についてであります。今日は具体的な今後の対策については御議論がなかったわけですが、私どもとしては、今後を考えていく上で、全体観として網羅的な対策の状況をしっかり把握したいという意味で一つ御提言申し上げたいのは、平成21年に自動移換者問題関係者連絡協議会の中での検討結果が報告書として国基連名で年金局長宛てに出されております。これは当時、企業型年金、個人型年金の関係者での御議論を精力的にやっていただいたということであります。

 申し上げたいのは、この内容を今回の自動移換者問題の対策を考えるときに改めて検証してみることが必要ではないかということを申し上げたいということであります。当時、平成21年3月末では自動移換者の資産は全体で約370億だったわけですが、令和5年3月末では2819億。10年強で約8倍弱まで拡大してきているという状況です。もちろん、当時以降いろんな対策が打たれているわけですけれども、残念ながら歯止めがかかっていないということです。

 この報告書に書かれている対策の切り口というのは、詳しくは御説明いたしませんが、基本的には入り口と出口という両面からこの問題を網羅的に捉えようという試みではないかと思っています。また、この報告書では自動移換者の位置づけについて、「一定期限内に所定の手続を取らない制度の想定外の者」と位置づけられています。こういう方が大量に発生し続けていることは、DC制度の特徴であるポータビリティがその機能を十分に果たせていないものであるという指摘もなされている状況であります。

 本日の資料1の最終ページにまさにポータビリティについての内容が取りまとめてあるわけですが、現状はこういう仕組みはあるのだけれども、残念ながら実際の運用は機能していないということではないのかなと非常に危機感を感じております。

 私どもとしては、5月のこの席で制度的な対応を強く要望いたしたわけですが、私の説明が十分でなかったせいもあるかと思いますけれども、国基連が自動移換者問題で非常に悲鳴を上げているというような報道もなされておりまして、私どもとしてはそういう取り上げられ方というのは本意ではありません。今、申し上げたように、現在の状況を見ると、むしろ悲鳴を上げているのは制度そのものではないかという感じがいたしております。今後対策の検討に当たっては、ぜひ制度の機能を十分に発揮できるための対策が必要ということを改めて申し上げておきたいと思います。

 また、自動移換者の数についてでありますが、こちらは事務局の説明にありましたように、総数に対して約半分が資産額0の方が含まれております。こういう自動移換者の扱いにつきましては、現在の取扱いというのは、制度の想定外に入ってしまった方は全て移換ありきという考えが根底にあるということの問題性が指摘されております。令和3年に野村證券の方が学会報告でもこのような報告をなさっておられて、アメリカにおける離転職時の資産移換のケースと併せて御紹介をしていただいています。これも入口・出口の両面から全体的な対策を講じるという視点ではないかと考えております。

 全体として制度の対応に当たっては、様々なこういう調査分析に基づく提言を十分考慮の上、対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 2点目として、資産運用立国に関しては、来年の7月にアセットオーナー・プリンシプルが取りまとめられるということでありますが、当部会の従来のこのような観点での取扱いに関しては、OECDの年金ガバナンスガイドラインというのがテーマに取り上げられてきたと記憶しております。そういう意味では、皆さんからお話がございましたように、プリンシプルがどういう性格のものになるかというのは、これからだと思いますけれども、少なくともいろんなルールの重複といったことがないように、従来のOECDガイドラインとの役割分担というか、整理をしっかりしていただければ大変ありがたいなということをお願いしておきたいと思います。

 以上でございます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 自動移換の問題は、確かに非常に重要な問題だと思いますので、また検討していきたいと思います。

 企業年金連合会鮫島様、お願いします。

 

○鮫島企業年金連合会理事長

 資産運用立国については先ほど時間をいただいて御説明をしたのですが、まだ申し上げたいことがありました。しかし、時間ももう過ぎておりますので、追加的にペーパーで出させていただこうと思います。委員の皆様にお配りいただいて、できれば資料としてホームページにも上げていただければと思います。よろしくお願いします。

 

○森戸部会長

 では、それは今、配るということでなくて、後で出していただく。

 

○鮫島企業年金連合会理事長

 はい。

 

○森戸部会長

 では、その取扱いは事務局と相談して決めたいと思いますが、一応そういう予告がなされたということで。では、それでよろしいですか。

 

○鮫島企業年金連合会理事長

 はい。

 

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 ちょっと時間が過ぎてしまいましたけれども、一応皆さんから御発言いただいて、まだ発言が足りないという顔をされている方もいますが、見ないようにして。私も大分我慢したのですよ。まあ、それはいいのですけれども。

 予定の時間が過ぎましたので、本日の議事は以上で終了といたします。

 今後の予定等について事務局からお願いいたします。

 

○海老企業年金・個人年金課長

 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡させていただきます。

 

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 それでは、第28回「企業年金・個人年金部会」を終了いたします。

 御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございました。お疲れさまです。